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勉強会デジタル教科書教材協議会(DiTT)では、有識者による勉強会を毎月開催しています。開催内容を一部ご紹介します。

2015年12月16日開催 

第65回 DiTT勉強会のご報告-金子暁氏・渡辺康太氏・後藤正樹氏-

2015年12月16日、山王健保会館2階会議室にて、第65回デジタル教科書教材協議会勉強会を開催いたしました。今回は金子 暁氏(広尾学園 教育開発統括部長)、渡辺 康太氏(広尾学園 中高ICTチームリーダー)と、後藤 正樹氏(株式会社コードタクト 代表取締役)にご登壇頂きました。金子 暁氏には、「生徒がICTと自らの力で日本の教育を超えて行く」というテーマで、渡辺 康太氏には「生徒から見た広尾学園でのICT活用」というテーマで、後藤 正樹氏には、「先生用スカウターを目指すschoolTakt」というテーマでお話を頂きました。  
以下は、発言要旨となります。

-金子 暁氏・渡辺 康太氏 ご講演要旨-

広尾学園の現在とこれからについて、金子暁氏と渡辺康太氏からそれぞれの視点からお話を頂いた。
 まず始めに金子氏からは広尾学園の紹介と共に、自身が考える学校にとって一番重要なポイントであるのは生徒数であるとし、広尾学園の今までの生徒数の動向を取り上げ学校現場がどういう取り組みを求められたか、振り返りながら教職員の前に立ちはだかった選択肢を述べられた。それは「今までの枠組みを追求するか」それとも「学校全体(考えや仕組み、やり方等)を丸ごと変えて生き残るか」というものだ。結果、後者の選択肢を選びそれによって定員を回復させ、また教育内容とその質をどれだけ高度化出来るかということに舵をきり、その改革の一つとしてICTの導入に至ったと述べられた。
この変革により学校と教育は良い方向へと進んだが、常に危機感を持ち続けていると補足した。そして過去の状況下から今なぜ伸び続けていられるのか、それを明白にするため一つの構図を紹介された。それは「教師の都合」と「生徒の未来」この二つを取り上げ、今何が生徒たちに必要かということを追求し続け教育活動を作っていく、そのうえで教員の都合を考えるという構図を導き出さなければならないとした。
これは日本のICT活用の構図と同じであると続けた。現在の広尾学園の状況は一人一台体制で何らかの情報機器を所持する体制をとっており、三つのコース(インターナショナルコース、本科コース、医進・サイエンスコース)の特色に応じ、適性に合った情報機器を所持する形だ。教員側はこのICTを教育活動あるいは学校のベースとして考えていると述べられた。このベースが充実・拡大することによって、教育活動の高度化が期待され今まで日本の学校では行えなかったことが実現していくとした。その例としてICT導入によって実現出来た教育活動をいくつかご紹介頂いた。最後に「情報爆発」に伴って増加する情報難民(ICT難民)を取り上げながら、これからの教育活動のあり方そして学校の課題を述べられた。

 次に渡辺氏からは学校生活でのiPad使用事例と学内にある「ICTルーム」のご紹介、この二つから広尾学園の現在とこれからについて生徒目線からお話を頂いた。
まず始めに金子氏の講演でもあったようにコースによって違う情報機器を利用していることを述べられた後、この情報機器の活用例を三つ大まかに挙げられた。それは「授業内でのプレゼンテーション」「授業内でのクリッカーアプリの使用」「クラスサイトなどでの情報共有」といったものだ。このようなICTを活用したことによって当初はトラブルもあったことを述べられながら、それとは対照的に先生が動くよりも自分たちが率先して動いた(情報機器の問題検証など)方が早いといったように自発的な生徒たちの動向が見られたと考察された。
このような傾向が見られたことから、先生方だけではなく生徒自身からも何か提案や改善が出来る環境作りが必要ではないかと続けた。この考えから次に「ICTルーム」紹介に繋げた。このICTルームとは作りながら学ぶ校内ものづくりスペースという目的で学内に準備している環境であり、ここではICTのサポートセンターと3Dプリンターやカッティングマシンが設備された放課後にものづくりが体験出来るFabスペース、この二つが主な役割となる。このICTルームを設置する経緯となったのは生徒からの提案であったと語られた。生徒間が自由に集まり、そこから新しいものを生み出せるコミュニティールームを作れたらという目的で提案されたものであったと続けた。最後に、このような「ICTルーム」を準備するにあたって見えてきた課題として、物を作りたいがスキルが足りないためサポートしてくれる大人、団体を探す必要がある、また男子だけではなく女子も使えるような空間にする必要があるとし、これからの計画として「作りながら学ぶ」「気軽に生徒同士が交流できる」空間を生徒自身から作っていければ良いと述べられた。
 

-後藤 正樹氏 ご講演要旨-

schoolTaktを通じて学校にどのようにICT教育を取り入れるかについてご講演いただいた。株式会社コードタクトではタブレットが導入された学習環境において使用するシステムschoolTaktの開発を行っている。総務省先導的教育システム実証事業やドリームスクール実践モデルにも選出された。
schoolTaktのコンセプトは「先生が教えやすく、生徒が楽しく学べる環境づくり」。そのためにはまずは先生の教え方の延長線上にシステムをつくっていくことが大事だとしている。団塊の世代の教員が定年退職してしまうと、若い先生にベテラン教員のノウハウが伝わらないといった問題が発生する。教育現場へのICT導入により、学力向上のみならず上記のような問題も解決したいと考えている。
schoolTaktは、生徒タブレットで学習する様子を教員が見ながら授業を進めることができるようになっている。生徒が問題を解くまでの過程をリアルタイムで確認できることもシステムの特徴である。また、生徒から教員に対して問題の理解度を示すこともできるようになっており、生徒の理解度によってその場で授業の進め方を変更することも可能になる。まずは教育現場へのICT導入において、schoolTaktを使用して教員が生徒の学習の様子をマネジメントすることができるようになることを第一に考えている。
schoolTakt にはアクティブラーニングに合わせた機能も展開している。生徒の画面はクラス全員で共有しながら議論し、他の生徒のページに直接コメントを書き込むことができる。schoolTaktを利用することで一斉授業、アクティブラーニング、さらには家庭での持ち帰り学習にも対応している。最近では他の企業と共同して授業モデル作りにも取り組んでおり、神戸新聞社と連携して、小学生がschoolTaktを使用してみんなで取材や新聞記事作成を行う取り組みや、東京と沖縄、ロシアの3つの地点を繋いだ遠隔授業も実現した。
 


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