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勉強会デジタル教科書教材協議会(DiTT)では、有識者による勉強会を毎月開催しています。開催内容を一部ご紹介します。

2015年09月17日開催 

第62回 DiTT勉強会のご報告-為田裕行氏・小橋真哉氏・水野雄介氏-

2015年9月17日、山王健保会館2階会議室にて、第62回デジタル教科書教材協議会勉強会を開催いたしました。今回は為田 裕行氏(フューチャーインスティテュート株式会社 取締役 教育ICTリサーチ主席研究員)、小橋 真哉氏(株式会社コンセント サービスデザイナー)と、水野 雄介氏(Life is Tech!代表)にご登壇頂きました。為田裕行氏には、「先進的事例から見る、教育ICT導入の現場」というテーマで、小橋 真哉氏には「サービスデザイン思考による体育のアプリ開発プロジェクト」というテーマで、水野 雄介氏には「デジタル時代に生きる中高生の未来を変えるIT教育」というテーマでお話しを頂きました。  
以下は、発言要旨となります。

-為田 裕行氏 ご講演要旨-

教育ICT導入事例として、佐賀県武雄市、桜丘高校、袖ヶ浦高校、広尾学園の事例を取り上げ、学校の現場にフォーカスをあてた教育ICTの導入に関してご紹介頂いた。佐賀県武雄市ではタブレットを利用した授業を行っており、その利用目的としては、授業科目に準じてタブレットの写真機能を活用したり、プレゼンをしたりする道具として活用していた。またドリルとしての活用法も伺えた。
桜丘高校ではタブレットを生徒が一人一人持っており、その利用目的としては、問題をデジタルで配りそれを解くのだが、解いている様子あるいは書いた答えを皆で見られるようにし、同じ問題に対して皆で考える手段として活用している。袖ヶ浦高校ではタブレットを生徒が一人一人持っており、その利用目的としてはプレゼンテーションに特化して活用している。発表者・録画・書記・タイムキーピングとして利用し、プレゼンが終わったらその様子を皆に共有し自宅で振り返るような過程を築いて利用していた。広尾学園ではプレゼンテーションをGoogleのシステムを利用して行っているため、クラウドから自由にプレゼンテーターのデータが見られる方法を取り入れている。その方法により聞き逃しの防止や疑問点の見返しが潤滑に行えるため、プレゼン終了時は質疑応答の時間を活発にさせるような工夫が実践されている。
これらの4つの事例をもとに、ICT導入の目的9類型を掲げ教育現場で必要とされるICT導入の環境を考察されました。現状ではこの9つ1. 興味喚起 2. モチベーション喚起 3. 理解促進 4. 授業効率化 5. 進捗確認、理解度確認 6. 教材拡充 7. 表現手段、思考手段拡充 8. 家庭との情報共有 9. 学習環境の拡充をICT教育導入としてカバーしていく必要があるとしました。これらの9類型をもとに、どのシステムを導入していくべきなのか教育関係者とシステムのマッチングを結びつけ目的を明確にしていくこと、また最先端にすることによって教育として助かる部分、悪くなる部分をしっかり見極めて教育にICTを取り入れる活動をしていきたいと語られた。
 

-小橋 真哉氏 ご講演要旨-

株式会社コンセントは雑誌や教科書のデザインからスタートし、現在はWebやアプリなどを手がけている。その手がけているデザインの領域は大きく3領域としているが、今回はその中のサービスデザインで進んでいるプロジェクトをご紹介された。
サービスデザインをしていく過程として、ユーザーにインタビューをしたり、サービスを使用する人の観察をしたりして調査を行っている。それをもとにどこに潜在的な価値があるのかを分析したり、ワークショップでのコミュニケーションを通してビジュアル化を行ったりするプロセスを説明された。それをもとにどこに潜在的な価値があるのか、またワークショップを行ってコミュニケーションしながら実際にビジュアル化を行うプロセスを取っているというコンセプトを語られた。
その後本講演で紹介するプロジェクトに至った経緯として、DiTTの小金井小学校で行われた実証研究プロジェクト「ICTを活用した体育の授業づくり」の内容をご紹介頂いた。その内容は、実際にiPadを導入し授業の様子を記録してそれを生徒たちが動画を見ながら振り返るという授業を行うというものであった。その時に得られたのは動画によって動きを可視化出来るということ、それによって体育の授業内で見られた良いプレーというものを振り返れるという点が良かった。その一方、動画を撮るだけということには問題があるのも垣間見られた。それは見て振り返るということに生徒たちが飽きてしまう点が懸念された。体育の授業はものすごく転換が早く、スピード感が他の授業と違う。そのため短時間でも振り返れるという過程が明白にならないか、また皆で振り返るところがスピーディーになり且つ生徒自身がインタラクションに取り組める環境を構築できないか、それらに関して有効性を図れるものを提供する目的で体育アプリの開発に至った。開発に至る経緯の説明後、そのアプリに関しての機能のアイデアまた、そのアイデアによってもたらされる教育への価値、学びのインタラクションを変えるための目的を、仮説の構築、計測、学習というデザインプロセスをもとにご説明頂いた。今後出来上がったプロトタイプを小学校で検証授業を行うとしているのが今のプロジェクトの現状として報告された。教育とICTをめぐる課題に対して、サービスデザインはどう寄与しうるかということをまとめとして最後に語られた。
 

-水野 雄介氏 ご講演要旨-

高校で講師経験のある水野氏が、勤めていた人材コンサルティング会社を5年前に辞め、プログラミング教育サービスとして子供たちの成果を伸ばすということを目的に作ったのが、Life is Tech!だ。
今回は、中学高校生向けのプログラミングで実際に実施していることの紹介と教育への参入についてご講演いただいた。
授業では、アプリ製作など希望する14コースのうちの一つを選んでもらい、それぞれの子供の特徴や好きなものをきちんと見られるように、1班につき1対6で教えている。この授業について、水野氏は「たった3時間でも人生が変わる。」と提言している。
そこで水野氏は好きなものこそ伸び、学びはモチベーションに繋がるとし、Life is Tech !を「IT界のディズニーランドにしたい」と語る。 そのためには、子供たちがいかにやりたくなれる環境を作れるかが鍵になり、「学びのモチベーションを作ること」「好奇心を育てること」「しっかり自分のやりたいことを伝えること」を行わねばならないという。 同時に、好きなことが同じ人と集まり、将来に希望を持たせ「リアル」で行う価値を大事にしたいとしている。
そして最も大事にしているのは「プロとおなじ土俵でやる」ということだそうだ。これまで、このプログラムには1万3千人以上の子供が参加している。その中からは、とある中学生がアプリをリリースし8万ダウンロードを記録するなど、様々な実績を子供達は残し始めている。そこで大人側も、有名企業とのドラフト会議を始め、様々な試みに取り組んでいる。これについて水野氏は、野球は消費者・生産者側どちらも経験ができるのに、ゲームは消費者側になっている。ならばITも生産者側になってもいいのではないかと語る。 これだけではなく、今後、教育をよくするには入り口出口中身を変えていかなければならないとし、
1武器を持っていること・自信を持つこと 2アウトプットの量が多い 3学校でも認められる 4出口が大事(大学や企業への輩出など) この四つを以って、ヒーローになれる仕組みを企業から支援等も得て行っていけたらと、語った。
 


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