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勉強会デジタル教科書教材協議会(DiTT)では、有識者による勉強会を毎月開催しています。開催内容を一部ご紹介します。

2012年01月17日開催 

第18回 DiTT勉強会のご報告-大橋正人氏・川崎紀弘氏-

    2012年1月17日、山王健保会館2階会議室にて、第18回デジタル教科書教材協議会勉強会を開催いたしました。第18回目は大橋正人氏(株式会社文溪堂 企画開発部)と川崎紀弘氏(株式会社AZホールディングス 執行役員 クリエイティブディレクター)にご登壇頂きました。大橋正人氏には、「DiTT実証研究プロジェクト・情報活用能力を高める教材と授業法の開発の中間報告」というテーマで、川崎紀弘氏には「学びやすさとデザインの関係」というテーマでお話を頂きました。
    以下は、発言要旨となります。


    -大橋正人氏 ご講演要旨-


    文溪堂は岐阜県羽島市で教材づくりをしている創業110年の会社である。
    本日はDiTTの実証研究の中間報告をしたい。
    今回は、岐阜県唯一の私立小学校でもある岐阜聖徳学園附属小学校を対象に、総務省のフューチャースクールの研究構成員でもある石原一彦先生(岐阜県聖徳学園大学教育学部教授)にご協力いただき、AZホールディングスさまとの協働での研究となった。
    この実証研究では、小学校における情報活用能力の確実な習得が今日的課題となっている状況を踏まえ、「デジタル版情報活用ノート」を試作し授業実践でその教育的効果を検証することを目的とした。5,6年生の各2クラスを対象に、10単元のうち1単元を開発し、研究授業と検証を行うことになった。児童の端末はiPADとアンドロイドを使用した。
    情報活用能力の育成には、教科内容の改善、教科内容への位置づけの改善、さらに新しい領域の創設、新しい教科の創設も重要であるという観点から、情報活用ノートや情報教科書の必要性が考えられる。
    文科省「初等中等教育における情報化にかかる学習活動の具体的展開」報告書によると、小学生に求められる情報活用能力は3観点8分類で構成されている。
    その観点に則り、「情報活用ノート」を試作した。
    まず、1~10単元ごとにテーマをきめて、それに必要なツールを開発することとなった。その10単元のうちの一つ「情報を正しく使おう(情報モラル)」を試作し、実際に授業で使っていただき、検証した。
    ・・・子供たちが実際に使う教材「情報活用ノート」を使って内容を紹介・・・・・
    各コンテンツの最後に「振り返りシート」があり、子供たちの意見を反映させながら先生と考えていく構成となっている。また、コンテンツは漫画を利用したり、子供たちが興味を引くような内容となっており、子供たちの目線で使いやすいよう、工夫されている。さらに、教師が使用する管理メニューでは、子どもたちの活用した状況が全て一覧で閲覧できるようになっている。
    ・・・・授業の様子を写真で紹介・・・・・
    授業の際、先生の話に集中させたい時はタブレットから視線を外すためにタブレットを裏向けにしているなどの工夫をしている。
    これまでに見えてきた課題として、下記のことが挙げられる。
    ・授業前、授業中における支援者の必要性
    ・端末、ブラウザソフトごとに表示が微妙に異なる→最適化
    ・ボタン(使い勝手)や色遣い(プロジェクタで提示する際)の再検討
    ・1単位時間に盛り込む内容の吟味と精選
    ・機器使用時と板書時の切り替え→児童の視線、意識をどうコントロールするか瞬間的に負荷が大きくなる際の対処
    ・児童の過酷な操作に対する対処
    ・端末への光の移り込み、投影画像の見にくさ
    ・机の配置と児童・教師の無理のない動線
    以上を踏まえ、授業を成立させるためにアプリケーションはどうあるべきか、児童教師の立場にそった内容をつくっていきたいと実感した。
    来年度は公立小で出前授業をしたいと思っている。


    -川崎紀弘氏 ご講演要旨-


    本日は、デザインと言う観点から教育へのアプローチがどうできるかをお話したい。
    私どもAZホールディングスは、IT関連書を出版する会社、アート関連の書籍を出版する会社、Webデザイン会社、ライフスタイル提案をする会社で構成されている。その中で私自身は、雑誌や教科書等のデザインを考えるクリエイティブディレクターであり、その立場からデザインは学びにどう貢献できるか、あくまでも提言としてお話したい。
    NHKの番組「デザインあ」を担当している佐藤卓氏やアートディレクターの森本千恵氏など、いろんなジャンルのデザイナーのデザインによる教育効果の新しい試行錯誤が始まっている。これは、デザイナー自身もその効果を確かめたがっているではないかと考えている。
    学びやすさは難しいと思っている。昨年のアメリカの記事によると、読みやすいフォントと読みづらいフォントで学習したところ、読みづらいフォントで学習したほうが効果がアップしたというのである。この記事は、グラフィックデザイナーの間ではかなり話題となった。この問題定義に関しては、後ほど別の観点から私の考えを述べたいと思う。
    私は、以前小学校の「生活」という教材をデザインした際に、えほんを参考にしてデザインした。そこで学科によってデザインジャンルが違うのではないかと思い、そこに着目してみた。
    デザインには、文脈のデザインと機能のデザインがある。文脈のデザインは、物語、構成レイアウトを意味し、機能のデザインは、ボタン、ラベル、認知、行動などを意味する。文脈のデザインは歴史(連続性、関連性)に向いており、機能のデザインはドリル(反復性、インタラクション)に向いている。
    英語、国語、数学、社会、理科でそれぞれデザインジャンルが違うことを認識し、文脈のデザインと機能のデザインではアプローチが違うことを理解して、それぞれの教科にあったデジタル教科書を制作することは、大変重要なことであると考える。
    ここで、2つの新聞記事をみていただきたい。(大きな読みやすいフォントと小さなフォントの記事を比較)
    見ていただくとわかるが、大きくて読みやすい字が必ずしも文章として読みやすいかは別問題であると考える。
    別の例を挙げると、「東大合格生のノートは必ず美しい」という著書が話題となったが、これも美しいノートが学習効果があったのは、つまりレイアウトは記憶に残りやすい、学習効果と関係があると考えると、この本は必ずしも誇張ではないということが言えるのである。
    情報端末では、文字の大きさが自由自在なため、レイアウトが変わり、記憶に残りにくいとも言える。だから、ノートをとり、自分でレイアウトすることは非常に大切である。
    レイアウトと学習との関係をしっかり把握し、学びやすさとデザインの関係を是非理解いただきたいと思っている。 

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