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勉強会デジタル教科書教材協議会(DiTT)では、有識者による勉強会を毎月開催しています。開催内容を一部ご紹介します。

2012年02月10日開催 

第19回 DiTT勉強会のご報告-神山忠氏・中山俊樹氏-

2012年2月10日、山王健保会館2階会議室にて、第19回デジタル教科書教材協議会勉強会を開催いたしました。今回は神山 忠氏(岐阜市立岐阜特別支援学校 教諭)と中山 俊樹氏(日本電信電話株式会社 新ビジネス推進室長)にご登壇頂きました。神山 忠氏には、「学びの土俵に上がれるデジタル教科書」というテーマで、中山 俊樹氏には「 ”教育スクウェア×ICT”について~取組みの概要と狙い~」というテーマでお話を頂きました。
以下は、発言要旨となります。


-神山 忠氏 ご講演要旨-


読むことが苦手な子どもにも、学びの土俵にのぼってもらうためにもデジタルコンテンツ、デジタル教科書が必要である。
学習障害をもった子どもの脳には、特異なところがあり、読むことを苦手とする子どもがいる。視力の問題ではなく、フィルタリング、集中して見るポイントがずれてしまい、読むことが難しくなる。しかし、文字として認識するのは苦手だが、図として認識するのが得意である。
学習障害だから学べないのではなく、その子の見え方や特性に合わせたツールが与えられれば学ぶことができる。そういう社会にしていきたい。
文字が苦手だが、その中でも特に明朝体が読みにくい。(太さが違う線や三角山など、文字として認識しづらい)ゴシック体、丸ゴシックが読みやすい。しかし、フォントによって読みやすさが違うのは、学習障害があってもなくても同じである。
読むことが苦手でも、分かち書き表示されるだけでとても読みやすくなる。神山氏は、実際の教科書は分かち書き表示になっていないので、「きょう/は/てんき/が/いい/です」というように、赤い斜線を引く事で対応していた。
しかし、正しいところで分かち書きにする作業も、ハードルが高い。「と」や「の」などの位置関係や意味、状態がわからないためである。
神山氏の場合、縦書きが読みにくい。目で追うものの、読もうとすると酔ったような間隔になる。縦書きのぎゅうぎゅう詰めの日本語の中から、意味の固まりを見つけて理解しなくてはならないことが難しいからである。

特に、ひらがなばかりの文章は読みにくい。
例)あるみかんのうえに あるみかんを もっていって。
  →アルミ缶の上に在る蜜柑を持って行って。
  →アルミ缶の上にアルミ缶を持って行って。
勉強が出来ない子どもを支援するために、全てをひらがなにするというのは違う。図式化した方が理解が進む場合、漢字や片仮名を使った方が理解しやすい。目的やその子の特性に応じて支援を行わないと意味がない。
「漢字(かんじ)」のように、漢字にふりがなをふった場合、どこまでが漢字でどこからがふりがななのかを認識するのが難しい。ふりがなの色を変えるなどの工夫が欲しい。
文章は苦手だが、フローチャートや図は得意である。例えばメモを取る際も、文章で記述するのではなく、図式化することで分かりやすくなる。イメージ的にメモをとることも、デジタルコンテンツを利用する事で簡単になる。
人々はバランスのいい脳を求めがちだが、アンバランスでいい。違いを認め合える社会になって欲しい。紙の教科書だけで学ぶのは、それが合わない子どもにとって辛いことである。
今の学校教育はひょっとしたら、ひたすら覚えることだけに走っているのかもしれない。それにより、ものごとを関連づけて覚えるような子どもには、居心地が悪いのかもしれない。関連づけを発見した子どもが、喜びを感じられるようになれば良い。
学校の教師としては、枠の中でおさめたい。しかし、デジタル教科書によって、学びがダイナミックになり、全てが点でなくて線で繋がっていることを教えたい。


-中山 俊樹氏 ご講演要旨-


“教育スクウェア×ICT”フィールドトライアル("http://www.ntt-edu.com")を去年から取り組み始めており、教育クラウドを通じて子どもたちに新しい学びのスタイルを提供しようとしている。通信事業者としての取り組みでもあり、特に「つなぐ」ということに拘った利活用を展開している。特に学校と家庭、学校と世界がつながることで、教育がどのように変わるのか、どのような価値をもたらすことができるのか、にチャレンジしている。
“教育スクウェア×ICT”では、教材コンテンツ系企業様の協力のもとに準備した約1,500のデジタル教材(映像、ドリル等)を利用できるデジタル教材ライブラリーや、先生が授業を構築しやすいような編集ツールも提供している。また教材を提供するだけでなく、どうやって教えて活用していくのかというメソッドそのものについても教科毎に提供している。
“教育スクウェア×ICT”では他にも一人ひとりの進捗を測るLMS(ラーニングマネジメントシステム)、校務支援、電子連絡網等のサービスを導入し、職員室内における先生方の事務的な負担をいかに減らすかということに取り組んでいる。
また教育クラウドを通じて家庭と学校とつなぐのは各家庭の光回線などのブロー ドバンドネットワーク(敷設が必要な家庭はトライアル期間中に限りNTTが対 応)。今回の対象地域にはブロードバンドネットワークを公設民営で運営してい るところもあり、比較的環境が整っていた。
こうした取り組みを全国5自治体、10公立小中学校で実施している。対象は小学 校5年生の算数・理科・社会、中学校2年生の英語。メソッド開発や良質な教材コ ンテンツの確保等の負担を考えて、対象学年は小中学校各一学年に集中させている。
トライアル自体は学校・自治体はもとより、NTTグループ、パートナー企業様、 教科アドバイザーによって運営、推進している。またアドバイザリーボードであ るラウンドテーブルには学識者や様々な企業で教育にかかわってこられた有識者 の方々にも参加いただいている。
各教室への電子黒板やWiFiアクセスポイントの配備に加え、端末としては、小学校の児童には7インチもしくは10インチのアンドロイドタブレット端末、中学校の生徒にはノートPCを一人一台配布した。

以下、実際の授業風景のVTR

まずは良いものを作ることから着手しているが、トライアル実施期間の3年間で 地域やNPOの方々の協力を得ながら、少ない学校予算の中でも自律的に継続し得 る姿としてエコシステム化できることを目指していきたい。

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