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勉強会デジタル教科書教材協議会(DiTT)では、有識者による勉強会を毎月開催しています。開催内容を一部ご紹介します。

2012年03月30日開催 

第20回 DiTT勉強会のご報告-趙章恩氏-

2012年3月30日、山王健保会館2階会議室にて、第20回デジタル教科書教材協議会勉強会を開催いたしました。今回は趙章恩氏(韓国ITジャーナリスト)にご登壇頂きました。趙章恩氏には、「韓国スマート教育推進戦略とデジタル教科書の現状」というテーマでお話を頂きました。
以下は、発言要旨となります。


-趙章恩氏 ご講演要旨-


日韓において、ICTに関する知識レベルや現時点でのネット普及率の相違はない。しかし、韓国では、携帯電話販売台数の68%、全国民の45%がスマートフォンを利用している。また、インターネットの利用目的は、SNSが65.6%、教育・学習が53.4%である。Eラーニング利用率は、小中高校生74.4%、2~6歳38.1%という背景もある。そのような状況の中でデジタルネイティブ世代である子どもたちもまた、直観的にデジタル教科書を利用する。韓国ではネット情報への信頼度が高く、SNS利用が活発で、ソーシャルラーニングの人気も高まっている。
以前、厳しい財政状況にあった韓国政府はITの先進国を目指し、スマートコリアに向けたアクションプランを打ち出した。5本の柱のうちの一つとして、ソーシャルイノベーションと経済活性化の両方を追求するとある。これは教育においても同じである。幸せは成績順に決まる!という国民意識が強く、収入の8割を教育に投入しているほど、教育は重要なものであると考えられている。2008年~2012年の李明博大統領政権の教育政策として、先進教育学術情報化による健康で創造的な人材育成を目指すビジョン2015を打ち出し、①健康な市民養成、②創意的グローバル人材養成、③疎通と信頼の教育文化創造、④持続可能な教育体制の具現、⑤GreenIT基盤の新教育システム構築、以上5つの戦略目標を立てている。
2014年から小中学校で、2015年から高校でデジタル教科書の全面使用される。韓国は1996年から14年もの歳月をかけ、スマート教育による教室革命(授業モデルの開発、デジタル教科書法整備、オンライン評価システムの構築、セキュリティ・情報通信倫理教育の強化、技術支援員の配置、クラウド環境の整備など)に取り組んできた。実証研究を重ね、ようやく全面導入にたどり着く。その背景として、それまでのEラーニング利用が活発であったこと、KERIS(韓国教育学術情報院:1999年設立)が公的な専門機関としてノウハウを蓄積し取り組みの中心となって動いてきたこと、NEIS(韓国の全国教育行政システム)が利活用されてきたこと、学習の情報化・サイバー家庭学習が利活用されてきたことが挙げられる。
また、韓国におけるデジタル教科書の定義として、学校と家庭で時間と空間の制約なく利用でき、既存の教科書に、参考書、問題集、用語辞典などを動画、アニメーション、仮想現実などのマルチメディアで統合提供し、多様な相互作用きのうと学習者の特性と能力、水準に併せて学習できるように具現化された学生向けの主な教材であるとしている。韓国では経済格差に関係なく、また長期入院や海外滞在などどのような状況でも均等な教育機会を与えている。生活保護層の家庭は、パソコン、ネット、電気代が無料になる支援を行う。ただ、予算の問題はつきものであるため、子どもたちが使う端末はスマートフォン、PC、タブレット、スマートTV、どんなデバイスからも利用可能とし自由としている。韓国は5年間で政府5389億円、民間37兆6000億、合計38兆1000億ウォンを投資してきたが、韓国の教育情報化システムをパッケージ化して世界に輸出したり、学習者用や教師向けの教科書アプリの開発が進んでいたり、産業面でも期待されている。
教育情報化の今後の展望と課題として、
・教科書法改定などの教育制度そのものの改革
・教育だけを抜き取って考えるのではなく、教室、学校、生活、国、全体での設計
・デジタルネイティブ世代と教師世代との思考の差を克服する
・自己学習を促進させるモチベーションを維持する
・クラウドコンピューティングの活用
・ノウハウを蓄積する民間専門家制度の設計
以上のことが必要であると考える。

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