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勉強会デジタル教科書教材協議会(DiTT)では、有識者による勉強会を毎月開催しています。開催内容を一部ご紹介します。

2012年05月10日開催 

第22回 DiTT勉強会のご報告-有元秀文氏・大坪太郎氏-

2012年5月10日、山王健保会館2階会議室にて、第22回デジタル教科書教材協議会勉強会を開催いたしました。今回は有元秀文氏(日本ブッククラブ協会理事長)と大坪太郎氏(株式会社毎日新聞社 デジタル・ソリューション・ラボ 兼「教育と新聞」推進本部委員)にご登壇頂きました。有元秀文氏には、「デジタル教材とブッククラブの可能性」というテーマで、大坪太郎氏には「新聞社とデジタル教育」というテーマでお話を頂きました。
以下は、発言要旨となります。


-有元秀文氏 ご講演要旨-


私は以前都立高校で教論をしており、その後文化庁で国語の調査官を担当していた。
本日は「デジタル教材とブッククラブの可能性」と題してお話したい。
先に結論を言うと、オープンエンドの問いについて話し合って課題を解決することが大変重要であるということを理解いただきたい。
私ども日本ブック協会は今年4月設立した。本が好きになること、楽しく読むことの大切さ、そしてオープンエンドの問いについて話し合い、解決することを目的としている団体である。その背景となったのが、現状の授業がつまらない教材を使い、教師が一方的に課題を押しつけている授業をしているため、子供たちが課題を解決する力が育たないという現状があるからである。
政府は1台80万円もする電子黒板を導入したが、教師は使い方が分からず、結局使えないまま放置している。よいソフト、使えるソフトがないことが問題である。その点、米国のソフトは大変充実している。教材を作成する企業や担当者の皆さんには是非、米国の学会に出席してノウハウを研究していただきたい。
また、社会に出て役に立つ教材、ディスカッションする力、営業力、解決力などを養うために何が必要かという観点から教材を作成し、教師にもその観点から授業ができるような研修を準備し、教材とセットで提供してほしい。
また、文科省にももっと現場を知ってほしい。全国学力テストをやっているが、全くPISAには対応できない国際性のない問題であると思っている。まさに役人が自分たちがやっていることが間違っていないことを証明するためにやっているものであり、採点もいい加減、ただのドリル問題であり、課題を解決する力を問うような問題は全く出ていないのが現状である。
ブッククラブではたくさんの本を読んで、グループディスカッションをして皆で感想を聞いて共有している。その中で課題を解決する力を養っている。Eブッククラブは、紙の本が嫌いな子供にも本を親しませることを目的としている。 イラスト・音楽・音声等で楽しく理解できるようになっており、ここでもオープンエンドの問いについて話し合うことを目的としている。子供の個性を引き出すには1つの答えでは育てられないのである。
オープンエンドの大切さを理解し、子供たちが楽しく学びやる気を出してくれるような素晴らしい教材を作ってほしいと願っている。


-大坪太郎氏 ご講演要旨-


私はデジタル・ソリューション・ラボと「教育と新聞」推進本部に所属しており、本日は「新聞社とデジタル教育」と題して、毎日新聞でどうデジタル教育と関わっていくかについてお話したい。
まず、新聞社の持つコンテンツ、ノウハウを教育に活用するという観点から「媒 体」「NIE」「事業」に分けてお話する。
1つ目の「媒体」についてであるが、毎日新聞社では「毎日小学生新聞」「News がわかる」「Mainichi Weekly」を発行している。毎日小学生新聞は75年前に創刊した歴史ある新聞であるが、小説を除いた他のストレートニュースに関しては他の新聞と同じ記事を扱っている。つまり大人と同じ情報を得ることができるようになっている。
「NEWSがわかる」は月刊誌で月毎に前月の出来事を図表を使ってわかりやすく解説している。また、「Mainichi Weekly」は英語学習者新聞という位置づけで、日常で使わない言葉が出てきたら、単語の対訳をつけている。
毎週日曜日の夕方BSにて「ニュース少年探偵団」という番組を放送しており、こ ちらは1週間のニュースをわかりやすく解説している。
次に「NIE」についてお話する。小学校では昨年、中学では今年度から学習指導要領に新聞活用という項目が追加された。新聞閲読と総合読解力の相関関係が実証されており、新聞を読むという習慣がある子供はオープンエンドの課題に対する力が強化されるのではないかと思っている。
また、毎日新聞社では昨年度だけで200回以上、全国の学校や行政機関、またカ ルチャーセンターなどに記者派遣を行っている。内容は、新聞の作り方、時事解説、また高校や大学などには特に需要があるが職業教育の一環として記者の仕事や役割などをお話することがある。
また、教職員対象に新聞活用教室も月1回開催しており、先生同士の意見交換の 場となっている。教育事業としては「時事ニュース検定」を年2回開催し、「全国小・中学、PTA新聞コンクール」は、皆さんの目標になるような場を提供することに役立てていただいている。
次に毎日新聞社がデジタル分野でどんなことをしているかをお話する。
デジタル分野でも「媒体」「NIE」「事業」の観点でそれぞれ活動している。 毎日小学生新聞のiPadアプリは、記事が配信されるだけでなく、全ての漢字にルビが振られていることにより、記事の中から学年別に習う漢字の書き取り問題を自動的に生成し、手書き認識によって、学習する機能を持つ。
また、「Hallo!毎日かあさん」という子ども向けの英語学習に寄与するアニメを放送しており、DVDブックとしても販売している。こちらのアニメは日常の出来事が盛り込まれているので、文法的な意味がわからなくても内容がわかるようになっていることで、小学校の学習指導要領における英語学習の目的である英語に親しむことに最適の教材となっている。
次に一番力を入れている「NIE」活動についてお話する。
小学校の先生を対象に記者を派遣してPCを活用した新聞づくりを指導している。 その中で見出しをつけていく講習が文章のエッセンスを抜き出すという意味で先 生方に大変好評である。また、新聞制作システムを提供しており、こちらはブログを作るような感覚で記事を作成できるようなソフトで、環境に依存しないため、どんな端末でも活用できる。新聞制作システムを使うと、文章の構成が容易であり、紙に書き写す、飾り付けるなどの時間を記事についての議論などにより多くの時間を割くことができるというメリットがある。NPO法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンで制作した未来新聞は、仮設住宅にいる子供たちが遠隔地で同時ログインして共同制作をしたもので、東北がこんな風に復興しましたという記事をまとめている。
次は事業についてであるが、2010年よりデジタル活用新聞賞を設け、学校新聞の中で特にデジタルを積極的に活用した人に賞を提供している。
最後にこれから毎日新聞社がどうやって教育に貢献していくかお話したい。
毎日新聞社で保管している140年分の記事や写真をうまく教育の現場で活用でき ないか?そして、新聞づくりのノウハウを教育の場面で活用できるように提供していきたいと考えている。デジタル教科書やiBooks 等でリンクを貼り込めば、写真をリンクさせることもできる。また、新聞製作システムの新展開として遠隔地でテレビ会議システムと連携して、記者がアドバイスしながら、各地の小学生が記事を制作するのも面白いのではないかと思っている。
今年度、毎日新聞は教育面を週3.5面から週5面に増やして展開している。 デジタル教科書普及のため、「デジタルで学ぼう。」という新連載もスタートし た。これからも普及のため、広報活動に力を入れたいと思っており、是非「2015年デジタル教科書全国配布」という記事を全国報道する機会がくることを切望している。 

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