▲

勉強会デジタル教科書教材協議会(DiTT)では、有識者による勉強会を毎月開催しています。開催内容を一部ご紹介します。

2012年07月19日開催 

第24回 DiTT勉強会のご報告-石沢朋氏・東博暢氏-

2012年7月19日、山王健保会館2階会議室にて、第24回デジタル教科書教材協議会勉強会を開催いたしました。 今回は石沢朋氏(株式会社ジャストシステム・ライセンス事業部・企画部・部長)と 東博暢氏(株式会社日本総合研究所・戦略コンサルティング部・コンテンツ創発戦略クラスター長)にご登壇頂きました。 石沢朋氏には、DiTT実証研究報告として「子どもが笑顔になる授業のためにソフトウェアがすべきこと」というテーマで、 東博暢氏には「教育情報化推進が社会システムに与える影響について~街づくりおよび海外連携の視点から見た教育産業の行方~」 というテーマでお話を頂きました。
以下は、発言要旨となります。


-石沢朋氏 ご講演要旨-


実証研究の報告とソフトウェアビジネスの特性について話します。 ソフトウェアメーカーは、ソフトウェアを使用する権利を販売するビジネスをしてい る。当社では「ジャストスマイル」という児童向けソフトウェアを開発・販売してい るが、一番気にしているのは「ソフトウェアは道具である」という点。なぜならば、 学びの場では子どもたちと先生が主体であり、ソフトウェアがそれより前に出てはい けないと考えているからだ。そのため児童向けソフトウェアには多くの配慮が必要だ。 例えば、マイフォルダという概念や、配当漢字での表示・入力などである。 現場の先生方から「各メーカーのソフトウェアの操作性を統一してほしい」という要 望が多いが、これは特許や意匠などの課題がある。
実証研究の概要は、「協働学習とは?」から検討が始まり、最終的に参加型の授業が できる環境をつくることにした。タブレットPCを使って意見を出しあったり、みん なの意見をみんなで共有し、比較・評価し、クラス全体の意見を練り上げるような環 境である。その検証のポイントを3つ設定した。
1、ICTを活用することで参加型の授業を上手く実施できるか
2、みんなの意見をみんなで共有する手法で学びが深まるか
3、どのような演出・工夫をすれば活発な授業になるか
実際に開発したのは、紙のノートのように文字が書けて画像を貼り付けられる「デジ タルノート」で、先生がアンケートやテンプレートを配布し、子どもたちが答えると いう連携できる仕組みを持たせた。このデジタルノートを3つの授業で試してもらっ た。 子どもは友達の意見に興味があり、他人が思いつかないような意見を出すと賞賛され る。この特性を生かした授業は紙のノートでは難しいが、デジタルノートで上手く引 き出すことができた。みんなの意見を瞬時にみんなで共有することで、授業が盛り上 がり、一生懸命考えるようにもなった。
授業を終えた子どもたちの感想は、「授業が盛り上がって楽しい」「自分の意見に注 目してくれるので嬉しい」「学びあいノートを使った授業をもっとしたい」など高評 価であった。 先生の感想で一番効果的だったのは、「みんなの前で意見を言うのが苦手な子でも、 書くことによって自分の意見をクラスのみんなと共有できる」ことであった。他にも 「キーボードが苦手な子は手書きでもできるのが良い」「答えを知ってそうな子にば かり当てずにすむ」などであった。 先の述べた検証ポイントについて数値測定はできていないが、3つともそれぞれ効果 があった。デジタルノートを使ったことで考えを練り上げていく手法を知り、先生か ら指示されなくても自然と考える行動をとるようになったこと。さらには特別な演出 をしなくとも、みんなの意見をみんなで共有することで活発な授業になることが見て とれた。
いままではPCを使うためにPC教室に移動していたが、これからは普通教室で各教 科のなかで思考・判断・表現力を支えるツールや環境が必要になってくると考えてい る。コンピューターの役割は、情報教育・作業効率化から創造支援・コミュニケーシ ョン支援が求められるようになり、それを提供していかなくてはならないと考えてい る。


-東博暢氏 ご講演要旨-


教育を取り巻く環境がどう変わってきたか説明します。地方自治という視点では 実際の地域社会でどのような市民参加を実現していくかが重要である。 基本的には義務教育の小中学校が土台となり、その上の高校・大学が存在する。 その中でも、教育研究機関たる大学が地域社会の教育に対し、重要な役割を果たす と 考えている。 大学は、産官学金融連携を推進し、新しいテクノロジーを開発に投資を呼び込んだ り、 地域社会の活性化に貢献する連携システムがあり、大学が地域社会において Think Tank的機能を果たしていくべきではないかと考えている。 その中で作った枠組みが、スマートキャンパスライフ研究会である。 当該研究会では、スマートデバイス・電子書籍・デジタル教科書が普及している現 在、 学生の最適な情報端末の利用方法や最適な教育サービスの開発および提供に様々な 課題を抱えている。 このような社会的な状況において、大学にはICT専門の教授の方々やモニターできる ICTリテラシーの高い学生がいるので、大学から、教育市場における次世代教育IC Tの モデルケースを作っていけないかと考えている。その中で、小中の義務教育へも反 映できる 要素もあると考えており、まず大学内での実証実験をスタートしている。 当初の研究テーマとして「デジタル教科書教材研究」を挙げており、専門書など多 様な 教材を活用する大学において、教科書・教材のデジタル化(権利処理・契約方 法)、配信システム などビジネスモデルにも係わるため、ステークホルダー間での議論内容は多岐に渡 る。 本研究では、大学市場におけるデジタル教科書教材のあり方について、出版社、通 信事業者、メー カー、プラットフォーム運営事業者、大学法人、調査機関等、様々なステークホル ダーを含め 多岐にわたる課題において机上検討を行い、可能な範囲で実証実験を行う。 この手のトライアルに重要なのは、教授陣、大学スタッフ、学生のコミットメント が必要である。 現在、実験にコミットメントしてくれたのは、公立大学法人大阪府立大学の総合リ ハビリテーション 学部(看護学部もスタートする予定)で、随時他の大学へも広げていきたいと考え ている。 また、今後、このような大学で行った取組をどうのように地域に還元すればよいの か、また、小中学校 などの教育分野にどのように応用できるか検討していきたい。

勉強会の一覧へ戻る



ページトップへ戻る

COPYRIGHT 2011. Digital Textbook and Teaching all rights reserved.