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勉強会デジタル教科書教材協議会(DiTT)では、有識者による勉強会を毎月開催しています。開催内容を一部ご紹介します。

2013年05月20日開催 

第34回 DiTT勉強会のご報告-佐藤里見氏・小柳和喜雄氏-

2013年5月20日、山王健保会館2階会議室にて、第34回デジタル教科書教材協議会勉強会を開催いたしました。今回は佐藤 里美氏(株式会社エデュアス 事業推進部 担当部長)と、小柳 和喜雄氏(奈良教育大学大学院教育学研究科 教授)にご登壇頂きました。佐藤 里美氏には、「困りのある子どもたちをテクノロジーで支援する「魔法プロジェクト」について」というテーマで、小柳 和喜雄氏には「21世紀型の能力評価の在り方~国際的な検討の現状と課題」というテーマでお話を頂きました。
以下は、発言要旨となります。


-佐藤 里見氏 ご講演要旨-


「困りのある子どもたちをテクノロジーで支援する「魔法プロジェクト」について」
株式会社エデュアスでは、ソフトバンクCSRの一環として“魔法プロジェクト”を行っている。ソフトバンクの経営理念である「情報革命で人々を幸せにしたい」という考え方のもと、ICT技術を活用した障がい児支援を行っている。たとえばiPhoneを用いた聴覚障害者の情報保証サポートや、読み書きに苦手がある子どもたちのためのプログラム”DO-IT JAPAN”へ参画している。2013年より、読み書きに障がいのあるディスレクシアの児童・生徒向けプログラムと、通常の入力操作が難しい肢体不自由、重度重複障がいのある児童・生徒向けに、モーションキャプチャーを用いたスイッチングインタ−フェイスを使ったOAKプログラムなどを“DO-IT SCHOOL”として開始した。
 “魔法のプロジェクト”は、2009年より、当時まだガラパゴス期と呼ばれるケータイが主流であった頃から、カメラやメモなどの機能を活用する“魔法のポケット”としてスタートした。2011年には初代iPadを活用した実証研究”魔法のふでばこ”を実施し、その翌年にはiPadの他Andoroid、iPhoneを加えて検証した”魔法のじゅうたん”を実施した。今年度は”魔法のランプ”を推進中である。
 “魔法のじゅうたん”は身近にあるテクノロジーである情報端末を使用した学習・生活の支援を目指している。特別支援学校や通常学校の特別支援級などの51校の協力と前年度の“魔法のふでばこ”からの継続採択と共同研究を含め全88校の協力をいただいた。
 魔法プロジェクトのコンセプトは東京大学先端科学技術研究センター中邑賢龍教授のご指導をいただいている。学習や生活をする上で困っていること、それをどのように身近にあるテクノロジーを使って解消するのかというのが主なコンセプトだ。しかしながら、学校の授業では機器を使うことができても、その後、受験など進路を進める際に機器の利用が認められるかどうかがハードルとなる場合が現状まだある。この課題は“合理的配慮”として取り扱うことはできるかもしれないが、その配慮が妥当であるのかを示し認められる必要がある。したがって、ICTなどの技術の導入は、一時的な場所を限るものとしてではなく、子どもたちが必要とする場所で使うことが可能である状態となるよう支援をしていかなくてはならない。他にも、できない部分を伸ばそうと反復して学習していくことで、学習に遅れが出てしまう場合がある。できない事の指導が長期化することにより学習を諦めてしまったり、自信を失ってしまう子どもたちがいる。子どもたちに与えられた学習の時間には限界があるため、出来ない部分の指導においては支援機器の利用により代替に置き換えるべきなのかを見極め、それらを認め、出来る部分を伸ばすこと大切になってくる。端末があればそれでいいということではなく、それぞれの子どもたちに何が必要で合っているのかを冷静に見極めた上での導入の必要がある。


-小柳 和喜雄氏 ご講演要旨-


「21世紀型の能力評価の在り方~国際的な検討の現状と課題」
能力評価において国際的に3つの動きがみられる。
一つ目は、「履修原理」から「修得原理」への動き。「履修原理」というのは時間割の中にいかに必要な教育内容が盛り込まれているかで教育機会を時間という観点で保証しようというもの。それに対し「習得原理」は、いつどのように学習したかにかかわらず、意図されていた力が獲得できているかどうかを評価しようとするもの。学ぶ場については、柔軟に定め、むしろその結果を評価することに関心を向けるアプローチである。
二つ目に、ICTを学習道具にとどまらずに評価の道具に使っていこうという動き。コンピュータを用いた子どもの読解、数学、科学に関する学習活動の達成度の国際比較調査の他、コンピュータを活用した情報の管理運営や他者とのコミュニケーション力などを測ることで、その現状把握と教育活動の改善へつなげていく動きがある。
三つ目は個人の力だけでなく集団の中の力の測定をしようという動き。個人の知識や問題解決能力以外に、チームワークなど、集団の中でどうやって力が発揮できるかを測定しようというもの。
ICTを活用した子供の能力の国際的な評価をする取組としてICILIS(※1)とATC21S(※2)が進められてきている。
ICILISはコンピューターの利用方法に関する知能や技能の調査といったいわゆるICTリテラシーの評価に関心を置いているのに対し、ATC21Sはグループワーク・協働学習など集団による学習活動の支援、つまりICTの活用した問題解決能力の評価に関心を向けている。
(※1)ICILIS : International Computer and Information Literacy Study The International Association for the Evaluation of Educational Achievement (IEA) が推進しているICTスキルの測定に特化した国際的テストの取組であり、2013年にその実施が予定されている。
(※2)ATC21S : Assessment & Teaching of 21st Century SkillsATS21S(同名の組織)が世界の教育学者や政府、国際機関と連携して、21世紀型スキルについて定義したもの 

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