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勉強会デジタル教科書教材協議会(DiTT)では、有識者による勉強会を毎月開催しています。開催内容を一部ご紹介します。

2013年10月15日開催 

第39回 DiTT勉強会のご報告-関島章江氏・片岡靖氏-

2013年10月15日、山王健保会館2階会議室にて、第39回デジタル教科書教材協議会勉強会を開催いたしました。今回は関島 章江氏(株式会社電通国際情報サービス オープンイノベーション研究所 シニアコンサルタント)と、片岡 靖氏(日本電気株式会社 マネージャー)にご登壇頂きました。関島 章江氏には、「タブレット活用による個々に応じた学習支援と電子教材の有効性~実証実験のご紹介」というテーマで、片岡 靖氏には、総務書「教育分野における最先端ICT利活用に関する調査研究」における日本教育工学振興会の取り組みについてというテーマでお話を頂きました。
以下は、発言要旨となります。


-関島 章江氏 ご講演要旨-


「タブレット活用による個々に応じた学習支援と電子教材の有効性~実証実験のご紹介」
電通国際情報サービスは、社員が1200人ほどのIT企業であり、主に金融事業、製造業、電通本体、三つの事業を軸としている。その中で、オープンイノベーション研究所は会社直轄の特殊な部署で、さまざまな方とのコラボレーションをしながら、現在ある技術からプロト開発や実証実験を通じ新しいサービスの探求をコンセプトとしている。
 品川のオフィスの最上階である19階にイノラボコネクティングスタジオがある。この中で、あらゆる業界の方々と議論をしたり、Ustream配信を通じ外部発信を行っている。研究所には、15名ほどの研究員が、自分たちが技術的なテーマを設け活動しているが、主なテーマは、“未来のまち”“次世代教育”“テレビ”である。
 まずは、イノラボの活動の中から教育関係企業の皆様にご理解されやすい事例をいくつか紹介したい。まずは、東京国立博物館とのコラボレーションとして制作した「トーハクなび」。これは、東京国立博物館内を案内をするアプリケーションであり、2012年グッドデザイン賞を受賞した。技術的にはAR技術や、高精度の屋内位置測位技術を用いて制作されている。博物館の楽しみ方を変える取り組みである。そして次に紹介するのは、今年度は笑顔を起点として世界を変えていこうというコンセプトをもとに実施された「エミタメ」プロジェクト。弊社が開発したミラーサイネージと、ソニーの笑顔認証ソリューション技術を用いて、来場者の方の笑顔を認識し、点数(エミーと呼ぶ)を貯め、たまったエミーに応じて、福島の子ども達を里山留学という形で大阪に迎え入れようとういものである。福島の子ども達が自由に自然を感じてもらおうとういう試みである。グランフロント大阪のTheLab.に設置し約4ヶ月で、490万EMYを集めることができた。
 さて、弊社の教育に対する事業であるが、社として教育事業の取り組みはこれまでなかった。しかし三年前に社内でビジネス企画募集の機会があり、私が兼ねてから感じていた教育現場でのIT化の遅れを改善する企画を行った。それを機に昨年4月に設立されたオープンイノベーション研究所(通用イノラボ)内にて“教育ラボ”を立ち上げた。この2年半、塾や保護者、学校現場の方々を対象とした調査活動や、“NEXT EDUCATUION”と題した教育関係者の方々が集うイベントの開催、高校生や幼児と保護者を対象としたさまざまな実証実験を行ってきた。
 今回は、そのなかから隠岐の島の高校生と公営塾とともに行ったiPadとデジタル教材を活用した実証実験を紹介したい。隠岐の島は、島根県の米子からフェリーで3時間かかる離島である。たった1校の高校にはさまざまな学力レベルの生徒達がいる。教材を購入するには本土に行かなければならない。そんな島に一つの公営塾がある。そこに通う高校2・3年生の生徒達10名にiPadとポケットwifiを配布。弊社が実証実験用に開発した専用のSNSと電子教材配布の仕組みを用い、期末テスト対策と夢ゼミという講座を対象に実験した。塾指導者(3名)は、さまざまな学力の生徒それぞれに合わせたレベルの教材(旺文社殿と数研出版殿より提供頂いた)を配布。その取り組み状況や進捗度合いを把握。間違えた箇所や、質問等のやり取りを専用SNSにて行った。学力面での成果は1ヶ月程度の実証実験できちんと把握することはできないが、生徒からは問題を解いていて曖昧な箇所やつまづいた時、待ちがえた時の塾講師のフォローはとても有効だったと話していた。
 iPad活用事例として、もう一つご紹介したい。昨年日本e-learning award2013を受賞した千葉県立袖ヶ浦高校の事例である。日本の公立高校で初めて自費でタブレットを購入した学校で話題となっているが、21世紀型スキルを身に付けるために活用を行っている。定年の近い先生方も授業に有効な場面を想定して無理なく授業にタブレットを利用している。先生がわからないところは生徒にやってもらうなど、先生と生徒の関係の近さが感じられる。また、外部の大人と接触すること機会を多く持つことの大切さを考えている同校では、企業は大学生、他校の先生方などを授業に招き直接プレゼンしたりコメントを頂いたりしている。
 DiTTが誕生したころには、現場の先生方の動きはほとんどなかったが、この半年で教育×ICTをリードしている先生が日本においても沢山出てきている。
 一社でなくDiTT企業がコラボしながら実現していく必要性を強く感じ、特にイノラボでは教育プラットフォーム構築の実現を目指しています。是非、DiTTメンバーの皆様と一緒に一歩先に踏み出していきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。


片岡 靖氏 ご講演要旨-


総務書「教育分野における最先端ICT利活用に関する調査研究」における日本教育工学振興会の取り組みについて
文部科学省による「教育の情報化ビジョン」では、21世紀にふさわしい学びの環境とそれに基づく学びの姿が示されている。そこでは、学校現場におけるデジタル教科書・教材、情報端末、ネットワーク環境等の整備、情報通信技術を活用した学習場面における質的な変化が期待されている。一斉指導による学び=一斉学習においては、デジタル教科書・教材からの知識の獲得や、デジタルノートに表現・記録など、端末を用いた学びの変化が示されている。一人一人の能力や特性に応じた学び=個別学習においては、デジタルデバイスを用いた思考を深める活動や、基礎・基本の習得などが可能になり、子ども達同士が教え合い学びあう協働的な学び=協働学習では、携帯端末による情報集種や、意見の分類や整理、発表・討論、他校や専門家との交流など、さまざまな学習場面でのデバイスの利活用が期待されている。
  教育クラウドの利用は、インターネットサービスの環境の整備により、電子教科書・教材や教育支援アプリ、教育コミュニティを活用した教育サービスを、学校、図書館、さらに自宅へ提供することができる。デジタル時代の教育ICT環境としては、学校・学校外に関係なく、いつでもどこでもだれでも「自分に合わせた学び」と「協働型の学び」ができる環境の実現が目標とされている。学校では、電子黒板および、電子黒板と無線接続された学習者用情報端末を用いた学習や、子どもの学習状況を端末上で確認したり、他校との協働学習も可能になる。学校外においては、図書館で電子書籍を借りて読むことや、保護者が子どもの学習履歴を確認したり、さらに入院などの長期療養中の子どもが病院で学校と同様の学習を受けることが可能になる。
 ICT化した教育現場においては、教育コンテンツの利用にあたっての認証(認可)が問題となる。自宅や公共図書館等、学校外からの教育コンテンツのダウンロード・利用における権限の管理や、組織単位でのライセンスに応じた許諾の管理、個別学習のための個人単位での利用アクセスにおける児童・生徒一人ひとりの学習データ、教員の認証管理と権限管理が必要になると考えられる。さらに、協働学習における教育コミュニティへアクセスする際の、様々な単位のグループによるアクセス権限の管理が必要となる。
 NECが考える学校教育認証フェデレーションとしては、様々なクラウドサービス間のSSO利便性の提供、パスワード漏洩リスクの低下、ID・属性の正確でスピーディな管理、世界標準に準拠する認証・認可基盤、フェデレーション運用ポリシーによる全体セキュリティレベルの確保、複数の認証方式への対応などが挙げられる。弊社では、NECグループビジョン2017として、“人と地球にやさしい情報社会をイノベーションで実現するグローバルリーディングカンパニー”を掲げている。今後も、教育現場におけるICTの安心・安全な利活用の実現に向けて貢献したいと考えている。 

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