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指導先生 学校の授業にてICTを活用し、21世紀型スキルを育むような 先駆的授業をされている先生方の事例をご紹介します。

チラシとポスターでイベントを伝えよう

都道府県 新潟県
学校名 上越教育大学付属小学校
先生氏名 水谷徹平
教科 学級活動
学年 小学5年

授業の目的

・自分たちの伝えたい思いと情報,読み手の気持ちを考えて,チラシをつくろうとする。(関心・意欲・態度)
・書いたチラシを発表し合い,表現の仕方や工夫に着目して助言し合う。(話す・聞く)
・文と写真を組み合わせ,表現の効果について確かめたり工夫したりして書く。(書くこと)
・相手や目的を意識して工夫や効果を比べ,複数のチラシやポスターを読む。(読むこと)

実施時期

平成26年10月~平成26年12月

活用したICT技術

タブレットPC 、 タブレットPC用アプリ

授業活動の概要

総合的な学習の時間で取り組んできた地域の保育園やお年寄りとの交流会を学校で行うことになった。地域の方へイベントを周知するために,チラシやポスターを作成し,配布することにした。

(1) CMや映画ポスターのキャッチコピーを読み解く(第1次,1,2時)
CMなどで耳にするキャッチコピー,映画のポスターや,新聞広告賞の作品などが意味やリズムを工夫していると気付いた。掛け言葉や音数によるリズム,押韻だけでなく,繰り返し,体言止め,倒置法,擬人法,反語表現などを見付けて味わった。
また,ポスターとチラシの違いについても考え,「ポスターは手に取らない分,インパクト勝負」,「チラシは手に取るから読む気にさえなってもらえれば細かい内容は小さくしたり,裏に書いたりしても大丈夫」,「チラシはA4くらいだから写真1枚ものの方が目立つと思うけど,ポスターは大きいから,組写真みたいにしていろんな写真を載せられる」といった表現上のことや,「チラシの人は,知っている人に説明しながら渡せる」など,ポスターとチラシの特性についての話し合いが深まった。

(2)アイデアメモをつくる(第2次,3時)
アイデアメモで,自分の来て欲しい人を思い描き,分担しながらアイデアメモを作成し,相手・目的・手法を意識して書き込んだ。手法については,手書きかタブレットを使ったデジタル化で話し合いが起こった。子どもから「タブレットでつくった方が『子どもがこんなものをつくれるのか!』と思える」という子どもと,「デジタルでつくるとその人向けというよりもみんな向けの感じ。手書きの方がその人への気持ちが込もっていそう」といった子どもがおり,議論が盛り上がった。「僕は字が汚いしなぁ」「デジタルだと見やすい」「直しも簡単」,「手書きだと個性が出る」など,子どもから出たそれぞれの特徴をまとめた上で,本人に委ねることにした。全て手書きにこだわった子ども,フルデジタルでつくると決めた子どももいるが,多くの子どもは,表面はデジタルで,渡す人向けのメッセージは手書きでといったハイブリッドでつくる形を選んだ。

(3)写真とキャッチコピーを組み合わせたチラシをつくる(第2次,4・5時)
アイデアメモ段階で,N2法やマインドマップ,マンダラートなどを使ってキャッチコピーを先に考える子どももいれば,まずはイメージ写真を撮ってからレイアウトを考える子どもなど,経験を生かし、行っていた。多くの子どもはデジタルと手書きのハイブリッドを選択し,表はタブレットで写真とことばを組み合わせたものが多かった。文字の色や大きさ,配置を変えながら画面上で見て,見やすいものに変えようと試みていた。

(4)作成したチラシを相互評価して修正する(第2次,6・7時)
全員の作成したチラシを張り出し,気付いたことや工夫,アドバイスを交流した。
まず「気になる」と子どもから出たのは,写真が目立つもの。学校の140周年記念につくったゆるキャラ「あおいちゃん」を大きく載せた修介さんの作品。写真にインパクトがあり,キャッチコピー「脇小のみんなと笑顔になろう!」,ボディコピー「おもしろいのでぜひ来てください」「なないろフェスティバル」「日時」「場所」「内容」が示されている。お互いに書いた付箋紙では,「キャッチコピーが目立っていい」「楽しい雰囲気が伝わるね」「名前を書いた方がいい」といった意見を受けていた。「最初に目に付く所はどこか」という視点で見たとき,写真のインパクトが大きい作品であった。芽衣さんは地域のコンビニに貼らせてもらうために作成しているポスター。キャッチコピーは「大発表」。交流で使ったタブレットの画面に,「和気あいあい楽しんだ」というメッセージが表示されている写真。「レイアウトが変わっていていい」「紫色の背景に青い文字だと見にくいかも」「キャッチコピーをもっと長くしてもいいと思うけど,みんなのと違っていい」と付箋でもらっていた。初回の相互評価は,見た目,インパクトという視点が大きく,フォントの色や大きさ,文字の位置などのレイアウトを修正した。次に,「見た人が来たくなるか?」という視点でキャッチコピーのみを一覧にし,感想交流を行った。修介さんは,「参加するお年寄り,保育園の子,僕たちがみんな笑顔だといい」と考え,「みんなにトリプルハッピーを」,芽衣さんは学年全員で盛り上げたいという願いを込めて「七十六人の大発表」と修正し,「これが見られるのは今回だけです」と希少性を表現したコピーも添えるなど,ブラッシュアップを重ねた。

(5)修正したチラシを地域に届ける(第2次,8時)
作成したチラシやポスターを,子どもは自分の渡したい相手や貼らせてもらう場所の方へと持っていった。つくったものがどういう反応だったかを直接受け取る場面と言える。チラシにもポスターも,説明をしたり,一緒に読んだりしながら渡した。自身で説明をしながら,書ききれていない所,質問を受けてチラシでは分かりづらかった所などフィードバックを受けることになる。子どもにとって自然な形で実際に活用される経験,その効果がどうであったかを振り返る経験を組み込めることで,生の他者評価を受け,汎用的能力の育成につながると感じた。

<ICTの使用局面>
子ども一人一台の環境でアンドロイドタブレットREGZAを利用した。タブレットで写真を撮りに行き,フォトアプリ「Skitch」で写真の上に文字を重ねた。その後,印刷して掲示したり,相互評価をしたりした。

期待できる効果/ICT活用のねらい

・写真を撮った後にキャッチコピーを重ねたことで,文を作るのが苦手な子どもでも「どんな思いを表したくてその写真を撮ったのか」を考えやすく,書くことが比較的容易であった。
・写真にことばを重ねる際に,文字の色やフォント,レイアウトを即時に変えながら試行することができ,何度もやり直しながらよりイメージに合う作品にしようとする姿につながった。
・写真の撮影方法や構図・背景処理への意識,画像加工や文字の書き込み,保存などの経験を高めた。

評価/振り返り

・ポスター,チラシやCMなど生活場面でふれる「ことば」を対象にしたことで,既習と生活経験をつなげ,出あった「ことば」に感性を働かせて味わうようになった。
・具体的な相手と目的を意識し,子どもが工夫した表現に正のフィードバックを受けたことで,多様性や表現への主体性に対して肯定感情をもった。

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