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シンポジウム国内・海外のデジタル教科書・教材関連のニュース・ 記事をご紹介いたします。

2015年11月09日開催

DiTTシンポジウム「デジタル教科書の位置づけはどうなる?~文科省検討会議について」

【詳細レポート】


石戸) これより、デジタル教科書教材協議会シンポジウム「デジタル教科書の位置づけはどうなる?文科省検討会議について」を開催いたします。私、司会を務めさせていただきます、デジタル教科書教材協議会の石戸と申します。よろしくお願い致します。

それでは、早速本日のパネリストをご紹介させていただきます。向かって右側から、ベネッセホールディングスベネッセ教育総合研究所理事長の新井健一さま、東北大学大学院情報科学研究科教授の堀田龍也さま、DiTT参与、一般社団法人日本教育情報化振興会の片岡靖さま、DiTT専務理事、慶應義塾大学メディアデザイン研究科教授の中村伊知哉です。以上のパネリストをお迎え致しまして、本日のシンポジウムを進めてまいりたいと思います。それでは、まず、文部科学省「『デジタル教科書』の位置づけに関する検討会議」の座長でいらっしゃる堀田先生に検討状況について、お話いただきます。それでは堀田先生よろしくお願いします。

堀田先生) みなさんこんにちは。スライドいただけますか?堀田でございます。
今日はこの下に書いてある「デジタル教科書」の位置づけに関する検討会議の座長として呼ばれたのかなと思うので、そうするとあまりいろんなことが言えないんですね。要するにまだ始まったばかりでいろんなことが決まっていないので、こういうことが話題になっているということを皆さんにご説明する、何かが決まったということまでは至っていないというお話になります。なので、僕も頑張っているのでみなさんいじめないでほしいなと思っております。

石戸) 今日はみんな応援団ですから。

堀田先生) わかっています。うけると思って言ってたんですけどあまりうけませんでした。デジタル教科書という言葉にそもそも「」がついていますが、文部科学省としては定義はあるんです。生涯学習政策局情報教育課が所掌している会議で定義しておりますが、教科書制度を十分に意識して定義されたものではないので、言い方むずかしいですね。同じ文科省でもデジタル教科書と言ってもみんなが思っているところが少しづつ違う可能性があるんです。なので、いまのところ「」をつけて議論をしています。最初に情報提供ということで、私から少しお時間いただいてお話いたします。この間、武雄市に行って来たんですね。みなさんご存知かもしれませんが、マスコミで色々言われている中で、実際行ってみるとみなさん先生方が頑張っているんですよね。こどももすごく頑張っています。反転授業をみて、ぼくはすごく可能性があるなと思ったので、まずここからお話したいんですけど、反転授業ですから、事前に家庭で学習動画をみてきます。これは、4年生の面積の求め方の複雑なところなんですけど、大体教科書に3パターンくらいでています。この3パターンを子供たちは事前に動画で見て勉強してきていて、どういうことになるかというのを事前に頭にいれてきて、完全ではないけど、なんとなく頭に入っている状態で学校に来ている。学校で先生から、授業の始めにこれ3つあったよね~ということで、いきなり授業の前半ではこれはこういうこと、これはこういうことというように説明をしている。普通このシーンは一般的には45分の授業の25分後くらいに出てくるシーンなんですけど、これが冒頭5分で行われるということです。そして前半これで終わって、じゃ中盤この問題はこうするのということになって、そうするとこの3つのやり方でどれが一番早く解けそうかというのを子供たちは考える。先生はこれを電子黒板に提示しているんですけど、これを子供たちの端末に送って、子供たちは端末見ながら、場合によってはこれ端末で動きますから、いろいろ切り離してみることもできますので、ヒントにしながら子供たちが考えることができる。また、ここはこうやったほうがよいとか、私はこうやるみたいなことを話し合うことができる。この中盤では時間を費やすことができる。でもこれもただ話し合えといっても、子供たちがイマイチわかっていなかったら、いい話し合いにはならないんですけど、もう3つのやり方をわかっているので、かなりレベルの高い話し合いをしていたようには僕には感じました。さらに授業の後半には、じゃさらにこれはどうするの?数字書いてありますけど、細かい数字はともかく、俺だったらこうきる、わたしだったらこうきるとかこの方がうまくいくんじゃないかとか、数字は気にしないでモデルで考えている。そうして、今度は子供たちが書き込んだものに先生がみんなの端末にみんなの意見を集約したものを送って、それをもとに自分の解き方などを考えて45分の授業が終わる。このように、とても密度の濃い授業だったので、反転授業はかなり可能性があるなと感じた。もちろん武雄市ではこれをやるためにお金もつぎ込んでいますし、苦労もされていらっしゃいます。この武雄市の取り組みをみて思ったのですが、たとえばこれは教科書に掲載されている問題なのですが、デジタル教科書ではないので、先生がデジタル化しています。教科書のこういった問題をデジタル化するのは、著作権法上大丈夫なのでしょうか?授業で使っているから大丈夫なんです。ネットワークで配信するのはどうかとか、グレーゾーンがもあります。これを撮ってきて僕が見せているのも実はグレーですよね。でもこうやって気になること、細かく言えばたくさんあるんですが、授業としてはあるいは学習としては非常に望ましいことが行われていたということをまず最初にお伝えしたい。今のようなことをやるためにはやはり教科書あるいは教材がデジタルになっていて、それをもとに先生たちが今のような学習を展開しやすくなる、授業の準備も楽になるし、反転授業をやろうとすると、今はコンテンツから用意しなければならないんですが、そういうものがある程度用意されているという状態になれば、きっと教育も充実するだろうなと思うんです。そういう大きな流れの中で、たとえば教育振興基本計画ではデジタル教科書の標準化をやれとでているのですが、これ平成25年度にだされています。そのあと、日本再興戦略でも平成27年にだされていますが、これもデジタル教科書の概念をこれから細かいことを決めなければならないんですが、それの位置づけとか関連する制度とか、教科書である以上,教科書制度とか複雑に絡み合ってきます。これについて専門的な検討をおこなう。これが私たちがやっている検討会議になるんですけど。平成28年度中に結論を出すということになります。教育再生実行会議でも教科書のデジタル化の推進に向けて、著作権のところをやると書いています。これは課題の検討をおこなうので、解決が出来るわけではない。私どもの検討会議も検討する会議なので、こういうところに課題があるということをお示しし、だから法律の改正とかやってくださいね。法律の改正をするのは僕らの仕事ではない。そういうところになります。世界最先端IT国家創造宣言にもこういうことが書いてある。関連する提言をずっと見せているんですけど、知財計画にもこれ、中村先生にも関係があると思うんですけど、知財の面からも入っていますし、規制改革の面からも入っていて、そういう面では条件は整っていて、あらゆる角度から教科書のデジタル化はしたほうがよい、という話はついている。
具体的にどうやるかは私たちが検討し、そして、それをもとにこれから法律の改正とかが行われるということになっている。なので私がやっている検討会議に対して、多くのみなさんのご意見をきかせていただいて、そして検討会議におり込んでいくということが望ましいことだと思って、今日このご登壇を引き受けました。その検討会議のメンバーは全部で17名です。私が座長で、天笠先生、教育学の権威でいらっしゃいますが、この方が座長代理ということです。あとデジタル教科書の標準化を文科省でやっている東原先生、そして、新井さんもいらっしゃいますし、広尾学園の金子先生も有名ですよね。教科書会社の方、佐賀県、荒川区、つくば市、あとマイクロソフト、こういう方がいらっしゃって検討を進めています。ですから非常に先鋭的な実践をやっていらっしゃる方から現実的なことをいう方まであるいは試しに行政的にやってみたけど、なかなかむずかしいことがある。みたいな現実論までいろいろ意見としてはでてきている。今まで4回おこなわれました。5回目があさってですね。青いところはヒアリングなんですけど、ヒアリングが続いている段階なので、ヒアリングに合わせて意見交換をしていますが、今いろんな人の意見から課題が整理されつつある状況です。その課題の検討はこの会議の後半になるので、今日の段階ではそこまでまだ話できないんですけど、2016年夏頃に中間まとめを予定しています。夏っていつなのかということなんですけど、僕の気持ちとしてはゴールデンウィーク明けくらいが一番いいんじゃないかと、初夏ですね。その頃を期待したい。ただ、いろんな調整がありますので、これはどうなるかわからないということですね。ヒアリングしたところは今まで7つ、明後日あと2つお聞きします。教科書協会に一番目に聞いたわけですけど、2番目にDiTTさんに来ていただいて、いろいろご協力いただきました。中村伊知哉先生から、教科書だけ紙でいいという理由はどこにありますか?とおっしゃっていただき、みんな、うん、そうだよなと話していました。あと、
CoNETSさんですよね。あと情報処理学会の方ですとか、小児連絡協議会の方に来ていただきました。次は教科書検定の方に来ていただいて、あとデジタル教科書を実際に売っていらっしゃる会社の方にも来ていただきます。位置づけを考えていきますと、実は私共の検討会議に関係する法律、法令がとにかくいっぱいあります。まずは、もちろん学校教育法ですけど、その次、義務教育では教科書は無償ですよという法律があるんですね。そのためには公立は教育委員会が、私立は学校長がといったことが地教行法で定められているとかですね。教科書として出していいのは、発行者として指定されている、これだけの会社が認められているんですが、とにかくいろんな法律が定められています。何かを変えようとすると、これらを全部一斉に変えなければならない。そうなると国会で法律の改正になるわけですから、もう何年もかかってしまう。ですから、急にデジタル教科書が無償で配布することになるということにはならないわけです。だけど、いつかそうするためには、まず動かせるところから今のうちに動かしておかなければならないと間に合わないという現実がある。あと、教科書の発行に関する臨時措置法というのがいつまで臨時なんだという話がありますが、これはいろいろあって、採択の仕組みですとか、教科書というのはあらかじめ展示しておかなければならないですとか、定価の基準があったりですとか、教科書の発行部数とかこれは児童生徒の人数によって変わってきますけど、子供が減るので、教科書のパイがへるので、業界としては縮小する可能性があって、デジタルがうまくビジネスにならないと教科書業界の体力が弱って、いい教科書が作れなくなるという可能性があります。でも日本のように国が教育内容を定めて、それに対して民間の教科書会社が競争し合っていい教科書をつくり,それを各地域が責任をもって自分のところにあったものを採択するというしくみは、民と官が、国と地方が上手にバランスをとった非常によくできた仕組みです。世界的にも非常にめずらしい仕組みです。それをここからひっくり返すのかというと相当ハードルが高いし、なぜひっくり返さなければならないのかという論を立てるのも相当大変だろう。逆に言えば今のその枠組みの中でできる部分からどうやってデジタル化したらいいかと考える方が現実的には価値があるのではないかと思います。もう一つ特別支援教育から見ると、拡大教科書というのを出しているわけですが、ここにはけっこうボランティア団体が動いている、教科書会社から見ればこれは全然ペイしていないことですが、それでも社会的責任としてやっていただいているとか。こういうのもデジタル化になれば、特別枠をもうけなくても、音が得意な子は音で聞き、目が得意な子は目で見て、というふうにできるのではないか。という意味でバリアフリーになるのではないかと思う。あと、著作権法、ここは非常に大きいですね。教科書にある作家の文章が載るというのはその作家の著作物が掲載されるということですので、ここにはお金も動きますし紙の教科書なら許す、でもデジタルにするのは困るとか、そういうことは作者によっても違いますし、法律的には大丈夫でもそこには巨額のお金が動くので、教科書会社としては非常に大変なことになるとか、あるいは外国の作品を載せるときは、日本の法律で縛れないところがあって、日本から見れば法外な金額がかかるということもありうる、そういう中で、日本の教科書会社は、いろいろ調整して子供たちのためにいい教科書を作っているわけです。そういう努力を後押しするようなことをやっていかないと、教科書の質の担保は難しくなるわけです。ですので、これはあくまでも検討の視点の一部であるわけですけど今私たちはこういう感じで検討していこうとしています。これは当面講ずべき課題と中長期的に検討していく必要がある措置にわけていますけど、一つはデジタル教科書をどういう範囲ですべきかですけど、いま教科書というと使用義務が課される、これ法律で決まっていますけど、つまりデジタルになったら、かならずそれを使用しなければならない、デジタル教科書が教科書と認められるとかならず使わなければならない、そうすると端末がなければならないのですが、それは全ての子供たちが使えるような端末がすでにないといけない。そういうのが入るかどうかわからないのに、これ教科書ですからかならず使ってください義務ですからということにはなかなかならない。ですから環境整備との関係はすごくあります。あと、音声はどうやって検定するのかとか、動画はどうやって検定するのか、URLはどうするのか、URLの中身が変わったらどうするのかとか、そういう検定の技術的な課題もあります。検定した結果、これ修正してね。といった時に、アメリカまでいって、ネイティブの方に音いれてもらうのか、映像も取り直しするのか、そのコストはどうするのかとか、2週間以内に修正と言われるのですが、期限内に大丈夫なのかとか、などの現実があります。また修正に時間がかかるとなれば、今度は4年で検定見直しという今のシステムを変えなければならないなど、ならば検定制度を辞めるかというとそれは先ほどの問題などもあり、現実的ではないという話になる。あとは、紙との関係で、これは極端で紙をやめてすべてデジタルにするという意見が時々でるんですけど、検討会議のメンバーではだれもそういうことを言う人はいません。当面、併用でしょうという意見が多く、これは中村先生も同じ意見ですよね。でも紙だけしかいけないの?というのもおかしいので、なので、併用ということになるんですけど、難しいのは、教科書は無償で提供となっている。紙だけ無償で配っていて、デジタルも無償で配るとお金が2倍掛かる。そうすると、国としてはコストがもたない。でもどちらかだけ無償となると、うちはデジタルでうちは紙でというとことになるのかなどなど、細かい話はいっぱい出てくる。あと、高等学校は義務教育ではないので、高等学校は有料でみんな買うわけです。なので、ここは受益者負担の原則がきくので、私は紙で私はデジタルでということが可能になるのかどうかなど、高校から話し合ったほうが良さそうだという話もあります。義務教育で実施しようとすると、かなりいろんなことを動かさなければならないということになるわけです。いろんな意見出ていますけど、デジタル教科書に効果があるということはみんなagreeです。特に小学校、英語の教科化が動いていますけど、やはり音声が出るとか動画がでるとかはいいだろうと。ただ、学力向上への寄与は、エビデンスがあるのかというのは常々言われています。次に導入に当たっての必要となる環境整備、これは私たちの検討会議の所掌範囲ではないんです。デジタル教科書の制度のところが所掌なので、環境整備は所掌範囲ではないんですけど、でもネットワーク環境がないところで、あるいはタブレットがないところでデジタル教科書といってもこれはあんまり意味がないことになりますから、いろいろ課題があるとか、また、周辺教材との関係をどうするか、これはデジタルになった時の標準化とも関係してくると思います。教員のICTの指導力とか子供の健康への影響とか、特にPTAの方は意見をおっしゃいます。あと、広く国民が,教科書はデジタルでもいいじゃないかと思うような動きを作る必要があるということが検討会でもでていますので、ここはDiTTさんに期待するところです。あとおもな意見としては、教科書の意義や役割、ALと書いているのはアクティブラーニングなんですが、いろんなリソースにあたりながら考える必要がある。当然ネットにとかデジタルの教材にとかなるわけですので、こういう時代の教科書の役割ってどうなんだとか。あと、小学校1年から全部デジタルでやるんですかという話とか。でも高校3年生になっても全部紙なんですか?とか、そこのグラデーションをどうするのかとか。検定された教科書をデジタル化するという話とこれはできそうですが、あとデジタル教科書を教科書というという話とはちょっと別な話なので、後者のほうがハードルは高いです。だけど、前者は出来る範囲からできる。教科書会社さんが価格的にかなりしんどくなると思うんですが・・あとビューアーの話とか、保護者負担なのかどうかという話が出ています。あと、教科書としての質の担保という話は非常に重要だという意見と質を担保するために検定の範囲を広げ過ぎられない。コストも時間もかかる。しゃべりだすとたくさんあるんですけど、大体の検討ということで、ここまでとします。以上です。

石戸) どうもありがとうございました。今日の参加者のみなさんは、文科省の検討会議の状況を知りたいという方が多いのではないかと思うので、他のパネリストの皆さんに申し訳ないのですが、もうこれで十分なのではないかという気持ちになりました。新井さん、検討会議のメンバーのお一人でもいらっしゃいますが、このあとディスカッションに入る前に追加コメントがありましたら、お願いします。

新井さん) 特に付け加えるようなことはありません。いつも余計なことを言って座長にご迷惑をおかけしているので、特にありません。

石戸) ありがとうございます。とはいいましても、90分みなさんからお時間いただきましたのでディスカッションに入りたいと思います。いつもはDiTTのシンポジウムは、自由に議論をしているのですが、本日は、文科省の会議の資料である「デジタル教科書の検討の視点について」というペーパーに則って、議論を進めたいと思っています。このペーパーに書かれている論点は、「教科書の意義・役割について」、「教科書の質の担保について」、「教科書としての位置づけについて」、「導入に当たって必要となる環境整備」についてという4点が大きな項目として挙げられているので、こちらについて議論したいと思います。最終的な理想の姿と、とはいってもコストや時間などの制約の中で現実的な落としどころというのがあると思うのですが、本日はその2つを明確に分けながらご発言頂きたいと思っていますので、よろしくお願い致します。DiTTも、2020年を5年前倒しにするということから活動を始め、理想と考える姿をイメージしながら運動をしてきたのですが、文科省の検討会議も始まり、いまは具体的な落としどころを見据えながらの計画も議論しているところです。とはいえこれからも技術も社会も変化し、学びのあり方も変わっていきますので、理想を掲げながら現実も見据える、その両面から皆様にはご発言いただければとおもいます。さて、1つ目の論点から議論に入りたいと思いますが、今回のペーパーにおける一番のポイントは「教科書の質の担保」、つまり検定の話かと思いますので、一つ目の項目については、簡単に皆さまのご意見をお聞きして、次に進めたいなと思います。ひとつ目の「教科書の意義・役割」についてですが、こちらには、教科書が持つ基礎的・基本的な教育内容の履修を保障するという意義・役割は今後も維持されることが必要であるといったことや、発達段階に応じて内容を検討する必要があるといったことが書かれています。改めて、教科書の意義や役割について、文科省のペーパーに書かれている内容を踏まえて、ご意見をいただければと思いますが、堀田先生からよろしいですか?

堀田先生) はい、「教科書通り」っていうと大体あんまり良くない意味で使われると思うんですけど、つまり教科書に書かれているというのはお決まりのことでそれを超えたことをやんなきゃいけない、みたいな社会的には、そう思われている。一方で教科書に書かれていることをどのくらいの児童生徒がしっかり理解できているかというと、これは実はけっこう大変で、それが完璧だったら、学力学習調査なんていらないわけでして、現実にはそうでないんです。知的なレベルが高い人は教科書なんてと思うんだけど、現実には教科書に書かれていることすら、わからないお子さんたちは結構たくさんいて、公立の学校にもたくさんいます。義務教育である小学校や中学校が基礎的、基本的な技能をしっかり身に付ける場だと位置づけられているが、そうだとすれば、教科書というものがスタンダードに決められていてそれをもとに先生が工夫しながら教えるという構図はなくなるもんじゃないとぼくは思います。その時、デジタルの方が教えやすかったり、わかりやすかったりするというのはしばしばあるので、実はこの文章の中には「デジタル版教科書」という言葉を操作的に使っています。これは、デジタル教科書というと、みんな夢を描いちゃうんだけど、「デジタル版教科書」というのは教科書をデジタル化したくらいなものというイメージで使っています。でもそれぐらいのものでも、大きくしたり音を出したりすることはできます。そうすると教科書の意義や役割がもっと深まるようになるんじゃないかと考えてますし、検討会議でもそういう方向で進んでいます。以上です。

新井さん) 教科書の意義役割については、日本の学力の国際比較からみても、日本が人口1億人規模でこれくらいのレベルを確保しているという背景の一つには教科書がしっかりしていて、使われているという意義は大きいのではないかと思います。そういう意味で教科書の役割は大きいと思うんですけど、ただ先程堀田先生がおっしゃってた法令のとおり、図書であることが前提になっているわけです。私は初回の時にこの図書である理由を質問して、これを変えなければこの議論の意味があるのかと申し上げました。というわけで図書に限る必要はないんじゃないかと思っています。

片岡さん) 今までのお話とかぶってしまうんですけど、ナショナルスタンダードを達成するために教科書の役割というのは非常に大きかった、効果的であった。それが国際比較で見ても達成されていることがわかっている。ただこれから身につけないといけない能力を考えたときに紙でよいのかというところが、先程新井さんがおっしゃっていたことと一緒なんですが、紙である必要があるのか、もしくは紙でないといけないのかということを議論はしていかなればならないのかなと思っています。ただし、さきほど言いましたようにナショナルスタンダードという考え方、それを普及していく方法としては、今の教科書制度というのは非常によくできた制度であるというところは、私も否定するところではありませんので、それを活用しながら、次の世代にどうもっていくのかを検討すべきかなと思っております。

中村) 冒頭で石戸さんがこの話はさらっといって次の議論をしましょうとおっしゃっていましたが、その通りだと思います。もうこの話いいかなと思っています。DiTTができたのは、5年前2010年で、デジタル教科書の法的な位置づけを検討すべきだと知財本部が閣議で決定したのがその2年後2012年だったんですが、まだ議論が続いていて、やっと2015年堀田座長の検討会議ができて、やっとここまできたという感じなんですが、ぼくらの救いとしては、その座長を堀田さんがやってくれているということなんですが、文科省、総務省の方もやる気はもってやってくれているのですが、なかなか教育のシステムががらっとデジタルに変わるかも知れないということが不安であったり、危険じゃないかという人がいたり、なかなか壁が厚いものがあって、ここをどうやってコンセンサスをとるかという難しい状況がある中で、教科書の意義とか位置づけを議論している場面じゃないなと思っておりまして、次にどう進めていけば良いのかというのを考えなきゃいかないんですが、堀田さんが文科省と一緒に整理をなさったこの検討の視点についてのペーパーは非常によくできていると思います。これに則って議論していけば、いい方向に進むんじゃないかなと思っています。そのなかでこの教科書の意義、役割についてのところで、スタイルなどを検討する必要があるとか、発達段階に応じて検討する必要があるとか、検証していく必要があるとか、バシっと必要があると書いてあって、そのとおりだと思うんですよ。そのあとのところで出てくる教科書の質の担保とか位置づけのところの文言では、必要があるか?とか考えてよいか?という問いかけになっていまして、そこがこれからの議論の本筋になるんじゃないかと思っています。僕が思うのは、教科書の意義役割というのは、これから100年たって教科書のデジタル化が進んだとしても続いている議論だと思うんです。今の紙の教科書の意義とか役割の検証というのはずっとやってきているわけじゃないですか。これ100年たっても200年たってもやっている話で、その検証したり研究したりする話と、じゃ導入するんですか、しないんですか?という話とは別の話で、今はもう決定の話をしなければならないという腹づもりのところにきているのかなという気がします。以上です。

石戸) ありがとうございます。あの教科書の意義・役割の二つ目の項目のデジタル版教科書の導入による効果と影響というところですが、今の話をお聞きしますとこちらも飛ばしてもいいのかなと思いますが、ここには、今後も効果、場合によっては悪影響などを検証し続ける必要があるといったことが書かれています。1点だけ気になることがありまして、先ほどの堀田先生のプレゼン資料で、効果はエビデンスの問題があるというところに黒丸が付いていました。しかし、すでに文科省、総務省の実証実験でも学力向上についても成果が示されているかと思うのですが、ここに黒丸を書かれているということの理由としては何があるんでしょうか?

堀田先生) ICTを活用して学習指導を行うということについての成果はエビデンスが出てきていると思います。しかしそれが、デジタル教科書のおかげなのかというとその成果は十分ではないと意味で黒丸しました。次はそこをやらなければならないんですけど、そうすると教科書は使わず、デジタル教科書だけを使ってやった時に教科書使用義務というところにひっかかってくるので、法令違反になるのでそれをやっていいのかということを調整しているわけです。だけど、とにかくやらないといけない、やったら効果が出ると思いますよ。その効果は学力が上がったとかだけではなく、子供たちのニーズにあった、障害にあったという子達には効果があると思いますし、それこそアクティブラーニングとか言われる時代の学習指導の方法だと思うので、そういう意味では望まれる効果が出ると個人的には思います。

石戸) ありがとうございます。他にご意見ある方いらっしゃいますか?新井さんどうぞ

新井さん) ここのところは検証を続けていくべきだと思います。どんどん技術も新しくなっていくわけですから、これはずっと続けていくことであって、文科省でもずっとやってきていらっしゃいますので、これからも検証されると思います。メインはやはり制度論だと思いますので、そこにフォーカスしていけば良いのかなと思います。

石戸) ありがとうございます。それではその制度論に議論をシフトしていきたいと思います。2つ目の項目の「教科書の質の担保」ですが、教科書の質を担保するための検定の話です。この議論をするにあたり使うであろう言葉の定義について、さきほど堀田先生の話にもありましたが、いまいちど確認しておきたいと思います。議論を円滑にするために、文科省が「デジタル教科書」と「デジタル版教科書」という2つの用語を定義しています。「デジタル版教科書」はいわゆる紙の教科書がデジタルになったイメージ、「デジタル教科書」というのは、副教材も含めてデジタルで子どもたちが学びに使える全てのものという位置づけで言葉が使われていますので、ご留意いただければと思います。教科書の質の担保に挙げられている項目に関して議論するにあたって、まずこれが決まればきまるであろうというポイントが、検定の範囲をどこにするかということですので、この質問をずばり聞いてみたいと思います。ここもはじめの話のとおり、理想と現実で、もし違いがあるのであれば、分けてお話いただければと思いますけど、堀田先生いかがでしょうか?

堀田先生) きましたね~。まず教科書検定とは何をしているかということなんですけど、まず学習指導要領に書かれていることがちゃんと教科書に入っているかをみているんですね。違う形で入っていたら、ここはこういうふうに直しなさいとかやっているのが検定です。よく検閲と誤解されるんだけど違います。最低基準を見ているんです。だから、学習指導要領に書かれていないことが今の教科書にはいっぱい入っているんです。それは検定からみれば、必要最低限のことはちゃんと入っているので、それはいいよということになるんです。教科書を無償で配るということは、コストかかった部分は国がもつということなので、そこで予算との関係があるんですけど、なので検定できる現実的な分量、時間、検定官みたいな人がいるので、その人の雇用の母数を考えると検定の範囲はできるだけ狭いほうがいい、そのほうが確実に見れるというのが文科省側の考えです。なので検定はいままで紙のノウハウがあるので検定は紙でやって紙で検定されたものは、できるだけデジタルで広くあまねく使えるようにするみたいなことがまずは突破口なんじゃないかと思うんです。それがデジタル版教科書ですね。でもそれはデジタルにするのはどこが作るのかとか、それを無償でやった時に今のデジタル教科書の販売に影響がありはしないか。そういう既得権益に影響してしまうので、慎重に進めてはいますけど、今みたいな話がある。次に小学校の英語で言うと、当然聞く、話す、読む、書くがあるんですけど、まあ読むのは教科書でできると、書くのもできる。でも聞くとなると先生の声になる。それと話すというとそれの裏返しになると。と考えるとやっぱりネイティブの音声が必要だよね。ということになる。教科書の文章に書いてあるやつをネイティブの人が読んだその音声というのは、デジタル版教科書としてはどうするんだと、これ検定するのか、しないのかとか。あるいは、今だったら、機械でも読めるんだから、機械に読ませればいいんじゃないかとか。でも機械で読んだやつを一生懸命練習するのかとかですね。あと、アメリカ英語とイギリス英語は違うぞとか、いやインドの英語だって大事だとか、いろんな話があって、まあこの話になるといろんな各論がすごく出て、決まらないということがあります。だけど、今のようなことを踏まえて質を担保することはとても大事、ただそれを今の検定のやり方でやっていくと、現実的には非常に大変なことが起こりそうなので、一体どこまでやっていくのかが慎重に議論されなければならないということです。

石戸) ありがとうございます。まとめると、現時点では、紙をデジタルにしたようなデジタル版教科書を検定の範囲にするのが時間的、コスト的観点から考えると妥当かなというご意見ですよね。

堀田先生) そこからやっていかないと、動画をどうやって検定するのか、とかそういう話にもなかなかいかないんじゃないかと思います。

石戸) 新井さん、いかがでしょうか?

新井さん) 特にこの件で堀田先生と打ち合わせしているわけではないんですが、基本的には同感です。要するに今のデジタル教科書に入っているようなリッチなものまで含めて教科書になってくれたらいいんですが、その点ではデジタル版教科書が将来デジタル教科書になるというのがそれはそれでいいのかもしれませんが、現実的にいろいろなハードルがあってそれは難しい。紙の教科書は検定されているわけですからそれと等価のものでもいいわけですよね。それがデジタル版になることで、デジタル教材とリンクして、拡張していける可能性があったり、ラーニングのデータを解析できる可能性があったりということが生まれてくるわけです。そういう可能性を作るために同じものでいいので、同等の検定ができるものであればいいんだと思います。音声リッチなものは今の技術では難しいんですから。たとえば紙であってもARのようなものがあった場合、将来技術的にできるんであればすればいい、今できないから無理ですねということではないですから。それと紙をデジタルにしただけでは面白くないという意見もあるんですが、それは大変紙の編集に失礼な話です。教科書はよくできていると思いますよ。それが紙であってもデジタルであっても、今教科書を活版で編集しているところはないと思うんですよ。デジタルになったものを印刷工程に流して、紙にしているので、そのデータになったものをタブレットに流せば、それがデジタル版教科書になるので、等価でもいいんじゃないかと思うんです。したがって検定というのは堀田先生がおっしゃったようなことでいいんじゃないかと思います。

石戸)ありがとうございます。あのここのメンバーで、事前に話し合っていたわけではありませんが、DiTT内でこれまでも法案などを作成してきたチームで議論をしてきた落とし所と概ね同じかなと思いますので、その議論を図にしてきたものについて、方岡さんからご説明いただければと思います。現時点では、DiTTの組織としての資料ではなく、内部の素案です。

片岡さん) 簡単に書いたものなんですが、さきほどお話がありましたように、紙の教科書って非常に素晴らしくて、私事で恐縮なんですが、DiTTに入ったときは、子供はまだ小学生じゃなくて最近の教科書ってちゃんと見たことがなかったんですけど、子供が学校に入って教科書をみるとほんと素晴らしく、これ、ちゃんとできれば学力つくんだろうなと思いました。こういう紙の教科書の編集する技術というのはそのままつかって、デジタル版教科書、この赤い丸が検定の範囲なんですけど、さきほど堀田先生がおっしゃったように今の教科書に指導要領の内容がちゃんと表現されているかどうかということをみていただいて、それとおなじような形でデジタル版教科書を作っていく、コストを抑えながら、まずはデジタル版を作っていくという流れが多分必要になっていくのかなと思います。

石戸) 中村さん、なにかありますでしょうか?

中村) ぼくはデジタル屋なので、デジタルのメリットを活かせないと嫌なんですよ。音声や映像がガンガン使えて、ネットにつながって、子供たちが創造力、表現力を活かしてコミュニケーションできるっていう教科書がほしいんです。だからできるんだったら、それも無償配布の対象になるようなところまでやりたいと思ってDiTTをやっているんですが、でも同時に大人なので、現実的な解はどこかなと考えると、別に示し合わせた訳じゃないんですけど、これをちゃんときめて、まずは導入することを決めていくことが現時点では一番大事なことかなと思います。ですから、その現実というのはコストと時間だと思いますが、その制約を踏まえたうえで、今導入できて法改正できて進められるところってここかなって思います。前々回ですかね。この場で遠藤利明さんが来られて、ICT教育の議連の会長が今オリンピック大臣ですけども400億円の無償配布に1000億円位積み足せばいろんなことできるよね。とおっしゃったんです。それくらいあれば、この次の世界に進められるかもしれないんですが、現時点ではここを進めるべきだと思います。

石戸) ありがとうございます。説明の仕方が悪いと、これまでのデジタル教科書のイメージよりも小さく限定されたイメージをもたれてしまうかもしれませんが、これはあくまでも現時点での検定の範囲はどこか?という議論でして、現実的に次のステップに進めることを考えるとここが落とし所かと思います。先程来、堀田先生からも、じゃ音声どうするの?動画は?という話もあがっていますが、そのあたりが文科省ペーパーの次の項目にあります。検定の範囲がきまるとそれらの整理もしやすくなると思うのですが、そのあたりもこのメンバーで確認をしていきたいと思います。

堀田先生) 一旦ここで付け足していいですかね。これいうふうに進めようと思っても、著作権者によっては、紙ではいいけど、デジタルではダメという人がでてきて、イコールじゃなくなるかもしれないとか、音声はデジタルでは出るけど、紙ではでないので、もうそれでイコールじゃないとか、デジタルの方が大きくなると、検定範囲の拡張になるので、検定をするのか、だれがするのか、コストはどうするのか、みたいなことの見極めが必要になってくるので、イコールとなっていますが、このイコールを実現するのでさえ、大変なことであるということです。でもこれをやっておけば多分使いやすいと思うんですよ。見せやすいし、こどもも見やすいし、もちろん紙の方がよければ紙をつかえばいいんだし、そのうち教材とリンクしていたほうがいいなとか、動画も出たほうがいいなという話は当然出てくる話なので、そうなったら、その次の議論に早く進めるんじゃないかなとおもって、当面の議論は落としどころはここだと主張しているわけです。

石戸) ありがとうございます。まさに次の項目でそのあたりのことが挙げられています。デジタルは紙よりも膨大な情報を含むことができますが、検定の範囲としては、紙の情報量と同じもしくは同程度の情報とすべきかという情報量の観点での論点ですね。皆さまのご意見を踏まえると検定の対象となるデジタル版教科書に関しては、同程度の情報量でよいという回答でよろしいですか?ご意見ありますでしょうか?

堀田先生) デジタルにすれば子供に届く情報量は増えていると思うんです。紙だと気づかないということはあると思うんですよね。でも検定としては同値なので、そこがうまいところだとぼくは思っているんですが・・

石戸) そうですね、たしかに子供が受け取る情報量としては増えるかもしれないですが、表現が難しいですが、いわゆるテキストとしては、情報量を増やすわけではないということですよね。それはみなさんよろしいですか?

中村) はい。

石戸) 続いては、先程来挙がっている拡張の話です。いわゆる外部サイトのリンク先の内容は検定範囲か?という論点に関しては、先ほどの話で、検定の範囲は、紙の教科書とニアリーイコールと定めるとしましたので、現時点では検定の対象に含まないということになりますが、それについてはご意見ありますでしょうか?

堀田先生) 今の教科書にも、詳しくはこちらといって、URLが書いてあるんですよ。ホームページの絵が紹介されているんです。そのホームページのことまで検定しているかというとしていないんです。なので、もはや言った先は検定の対象ではない、原則ですけどね。ということになっていて、そのうちきっとQRコードとか出てきて、詳しくはこれをタブレットで見てくださいみたいになるんじゃないかなと思います。QRコードばっかり並んでいる教科書が出てくるかもしれませんが、そういうふうになると検定は通るけど、あとは見てみないとわからないということになるかもしれないですね。技術的には今も言えることなので、言った先は検定しないと決めておいたほうが作る方も楽だと思うんですよね。検定されちゃったから、もう作り替えられないとなると今度は大変だと思いますよ。新しい情報をすぐに入れられなくなって、入れたいと思ったら、4年後もう1回検定受けなきゃいけないということになったら、逆にスピード感がなくなっちゃう。以上です。

中村) 石戸さん、わかりやすいね。

石戸) わかりやすいですね。堀田先生が順番に解説していただいた方がいい気がしますね。

中村) つまり今の話って、コアである紙の部分とデジタルの検定の範囲が大体一緒でそこが無償配布の対象になっていて、そのまわりに映像だとか、コンテンツだとか、URLだとかとんだサイトの先を作るというところは、財政的な手当がなされないというになるんですよね。だからそこのコストをどうするかという問題が付いてくるんですが、ここは担保保証しましょうとか大体見えてくると思うんですね。

新井さん) 議論でどうしてもデジタル教科書をどれだけ間引きしようかという発想になりがちなんですが、そうじゃなくて、一旦デジタル版教科書という言葉にたちかえって考えて、どういうふうにロジックを合わせていくかということを考えないとそのあとの議論と噛み合わなくなってくると思います。だからそこで一旦立ち返ってきた時に堀田先生が先程おっしゃったように等価でいいのか、たとえば音声が出る場合に、読み上げ技術で音声が出るようになった場合に、それは検定の範囲に含むのか、それはどう考えるかなど決め事が細々とあるかと思うんですが、デジタルにすることによって、DiTTの立場で言うと教材も含めて、標準化もどうやって次の世界を作れるか、という段階を踏んだ議論になるのかなと思います。

石戸) そうですね。次の項目のデジタル版教科書の範囲についてという項目がその辺に触れているところです。いわゆる検定の範囲となっていないデジタル教科書に関しても、本来は、シームレスにつながって、子どもたちが活用できなければいけないと思うのですが、その辺りをどうするかということについて議論していきたいなと思います。片岡さん、もう1つの図で説明していただけますか?

片岡さん) はい、先程周辺部分っていうのがありましたけれども、紙版教科書も実は周りにワークシートですとか、テスト、ドリルとか参考書とか、もしかしたら児童用デジタル教科書というものも存在しているかもしれないという状況になっています。(次スライドおねがいします。)デジタル版教科書もやはりおなじようなお話になるのかなと思っています。これも示し合わせたわけではないんですが、デジタル版教科書の周辺には、ビューアーとか、デジタルノート、マイページ等があってその外にデジタルコンテンツがあるんだと思うんです。先ほどの音声だとか動画とか、ドリルとか、そういった周辺部分が合わさって子供たちに豊かな学習環境を提供するということになるんだと思います。その核になるのがデジタル版教科書ということになるのかなと思うんです。標準化すべきところと競争領域とするところとある。この小さい丸は何かと言うと、デジタル版教科書と周辺にあるデジタルコンテンツとを結び付けるインタフェースというのをちゃんと決めておく必要があると思っており、そうすることによって豊かな学習環境が作れるんじゃないかと思う。メタデータとか、履歴とか、先程新井さんからも話がありましたが、そういったものを合わせて標準化というのを形成していく必要があるんじゃないかということで書かせていただいた資料であります。

石戸) この資料は、私たちがこういうふうに考えているということだけで、なんらかの公式な資料ではありません、これを出したのは、検定のところでももう少し話したいところもあるんですが、またあとで戻るとして、次の大項目の教科書としての位置づけについて議論したかったからです。そこでは、デジタル版教科書の範囲はどこまでかというのが一つ論点として挙がっているんですね。つまり、構成要素であるコンテンツ、ビューアー、ハードウェアなどがありますが、どこまでを教科書と捉えられるのか、ということです。私たちはここではコンテンツのみを教科書と捉えるべきではないかという考え方に則ってこれを描いたのですが、それについて堀田先生のご意見を伺えればと思います。

堀田先生) えっと、慎重に言うためにちょっと整理しますと、デジタル版教科書という言葉を暫定的に取り入れることで議論を円滑にしようとしていて、すでに文科省の資料にも入っていますし、それで議論は今検討会議では進んでいます。でもデジタル版教科書は教科書と等価にするかどうか、また等価というのはどこまでも等価とするかというところまではまだ決まっていません。ですから、そこは僕の個人的な見解です。という前提でお話すると、そもそも紙の教科書は履歴は取れないんですよ。履歴を取る機能は、そもそも教科書検定の範囲なのかのは当然議論があると思うんです。教科書は一般的にはノートと一緒に使うんですよ。ノートは検定しないわけですね。なので、ノート機能みたいなものがあったほうがいいけど、それは教科書の検定から見ればオーバースペックだよねということになる。そう考えると教科書の検定範囲はできるだけ小さい方がいいわけですよ。さっきいった通りですから・・と同時にそれがデジタルでシームレスにいろんなものが使えるようになっていることが僕は非常に望ましいこと。このときメタデータ機能と履歴をもしクラウドにやるとしたら個人情報の話がでてくる。以外と微妙な議論がビューアーですね。ビューアーはないとデジタルのものは見れないんだからないとだめでしょ。これは範囲内なのか、だって教科書はいろんなコンテンツが紙にかいてあるわけ。紙がビューアーだと思えば、紙と同じ、紙の質とかは検定の時は意識されている。堅牢かどうか。そのビューアーは堅牢かどうか。それは検定範囲なのかとか。これは考えれば夜も寝れなくなるほどいろいろある。ぐっすり寝ていますけどね。なので議論は余地はたくさんあるが原則論としては僕もだいたいこのくらいかなと思います。以上です。

石戸) 新井さんなにか補足、ご意見ありますか。

新井さん) わかりやすい絵だなと思います。

石戸) ありがとうございます。

新井さん) 問題はビューアーをどうするかだと思います。ハードウェアはあまり深入りしなくてもいいかなと思います。あとは、デジタル版教科書と紙の教科書は等価である必要があるのかないのか。何を等価とするか。機能によって製造化されたものは等価とみるのか。課題はその辺だと思います。

石戸) ありがとうございます。まさに本来はソーシャル機能、クラウド機能、履歴機能、ノート機能などが含まれていてはじめてデジタル教科書、広い意味でのデジタル教科書の価値というのが最大発揮されると思うのですが、そこら辺の周辺部分に関してはインタフェース側で拾い検定の範囲にしない方向を探るということかなと思うのですが、中村さん何かありますか。

中村) できるだけリッチな環境で子ども達に勉強をして欲しいと思うので、ハードウェアとかネットに接続あるいは映像音声などのコンテンツの扱いが出来るだけふんだんに使えるようにしたいいう問題と、検定で無償配布にするという範囲をミニマムにする問題を両方方程式で解く必要があると思います。検定で無償配布の範囲はコンテンツの部分でいいという決めがあるとして、ビューアーとかハードウェアとかソフトウェアのところをどうするか標準化をどうするかということやスペックの認定制みたいなものを設けるかという議論が当然同時にあると思いますし、そこの部分のコスト、無償の範囲外だとするとコストをどうやって作ってみんなで使えるようにするかという措置を考えるというのが同時で出てくる問題だけれども、検定の制度の話はまずひとまずここでこう決めてそういう話があるねということを併起することだと思います。

石戸) 最後にご発言いただいたところが、まさにあとで検定の話にもどりたいといっていた項目なのですが、質の担保のところでの最後の検討項目がデジタル版教科書の動作性をどのように担保すべきかについて検討する必要があるということです。端末によって動かないという状況は当然のことながら避けなくてはいけません。スペックの標準化や認定制度を作る案がありましたけど、ここに関してご意見はありますでしょうか。

堀田先生) スライドを今の教科書のところまで戻してください。
今は紙版教科書は教科書会社が作っていて誰でもが参入できるわけではない。参入障壁をどうするかは色々意見がありますが、質の担保とかとの背中合わせの議論となります。方テストとかドリルとかは教科書会社も出しているが他の会社も出していて競争している。そのへんの人たちのノウハウをどうデジタル化するかが僕は重要なことだと思っているんですね。なので紙がデジタルになった時その周辺にいろんな会社が参入できるような仕組みを作ってよりよいものが選ばれて、もちろんお金出して選ばれて、今もテストやドリルは保護者の負担で買ってますから・・・。そのぐらいの価格でそういうものが手に入るようにしておかないと結局は教科書だけで勉強するみたいなことになっちゃって学力は今より落ちる。今はドリルで保たれているもの、テストで保たれているものが一杯あるのかなと思っています。以上です。

石戸) 片岡さんマイク動いていますが、言い足りないことがありますか?

片岡さん) そうですね、そういう意味では先ほどのデジタル版のところでもあったのですが、いろんな参入障壁をつくってしまうことはしたくない。せっかくデジタルでいろんな取り組みをされようとされてる方が、例えばEdtecと呼ばれている人たち結構でてきています。そういう人たちが参入できるような環境をつくってあげる。ただそれがいいものなのか、わるいものなのかいろいろあると思いますし、動いたり動かなかったりということが困ってしまいますので、そういうことが先ほどスペック準拠認定みたいなものがありましたけれども、何かしらの軽いものでもいいと思いますが、準拠みたいなものを認めてあげるような仕組をつくってあげる必要があると思います。あとは著作権の話は今回あまり細かくはしないのですが、やはり著作権をクリアするノウハウ、そういったものに関しては、やはり優れた技術を持った方、優れたコンテンツを持っている方でもなかなかクリアできていないので、そういった人たちを支援できるような仕組みというのも今後検討していく必要があるのかなと思います。

石戸) ありがとうございます。教科書としての位置づけの次の項目もとても重要で、議論が必要な項目かなと思いますが、先程堀田先生のプレゼンにもありましたが、少なくとも当面の間デジタル版教科書は紙の教科書との併用を前提とすることが適当というところについて、みなさんご意見いただければと思いますがいかがでしょうか?

堀田先生) これは、発達段階、というか子供の年齢にもよると思うんですが、例えば小学校1年生が全部デジタルでやっていたら、多分中村先生はいいと思うんだけど、他の人はちょっとびびってそれでいいのかと言いたくなると思うんです。とかね。でも高校3年生が全部紙だったらということもありますので、だからこれは子供の年齢にもよるんだけど、当面紙と併用していると便利なところだけデジタルを使うという人がでて、その辺にニーズがあるということが業界もわかってきて、そしてそこをより厚くいろいろ出てくるんじゃないかと。また併用する時期はこれある意味では妥協案だけれどもの、次を考えるための重要な期間、スパンだと考えます。以上です。

石戸) 新井さん、いかがでしょうか?

新井さん) 当分併用でいくのが妥当だと思います。紙でずっとやってきていますし、まだまだ紙の合理性を越えられない部分も多々あると思うので、たとえばこうやって紙を広げてみることもデジタルではできないので、画面がばあっと並べられれば別ですけど、まあそういうこともないし、それとデジタル型の思考でやりやすい子供と、事前に頭の中で整理してやる子供といろいろありますので、しばらくは併用型でいいと思います。

石戸) 中村さん、片岡さん、いかがですか?

中村) 僕はデジタル屋ではありますが、デジタルだけで紙はいらないといったのは、ソフトバンクの孫さんなので(笑)僕も併用でいいと思っています。今も紙にペンでメモとっていますしね。だけどいつまで併用なのか、いつまで紙が必要なのかという話は今決める話でもなくて、時間かけて先生たちや子供たちが使っていく中で、まあ10年後か50年後かわからないですが、じっくり決めていけばいいんじゃないかなと思います。今は紙のメリットとデジタルのメリット、鉛筆のメリットとデジタルペンのメリットというのを両方活かしながら、いい授業をやっていただけるといいなと思います。

片岡さん) DiTTを立ち上げた時にデジタル教科書を作りましょうという議論をしていた中でもやはり紙と併用という話はでていました。よく言われるデジタルネイティブに対応した教育のあり方って多分変わっていくんじゃないかという話はあったんですが、実はここにいらっしゃる皆さんは、デジタルを経験して、同時にアナログの良さも経験してどちらも経験しているので、それってうまく使えればいいじゃんと思っている人がほとんどだと思うんですよね。それを紙かデジタルかという対抗ロジックで考えるのではなく、一緒にやっていい環境にするのが目的なので、別にデジタル化するのが目的ではないので、前向きな議論ができればいいなと思います。

新井さん) いずれ紙とデジタルとどちらかわからなくなるという、そういう技術もでてくるんじゃないかなと、そしたらそのときに考えればいいのなと思います。

片岡さん) そういう意味ではフュージョンって言ってるんですけど、合わさってうまくやればいいんですよね。

石戸) たしかに紙とデジタルが融合される技術が生まれてくるかもしれないということで、今全てを決めきらなくてもいいのかもしれませんが、今の議論を踏まえると、次の項目である「デジタル教科書の各法律上の位置づけについて」が、比較的整理がされやすいのかと思います。これまでのみなさんのご意見を踏まえますと、次の項目で挙がっている、デジタル版教科書の使用により学校教育法の教科書使用義務を履行したこととすべきであるとか、デジタル版教科書の使用義務を課すべきではないといったことがクリアになった気がします。1点「デジタル版教科書は紙の教科書の存在を前提とすべきと考えてよいか?」というところは、言い回しが微妙なところもあり、これは意見が分かれる可能性があるなと思うのですが、堀田先生いかがでしょうか?

堀田先生) これは、今は紙で検定をしてそしてそれをデジタルにしたのをデジタル版教科書っていう流れで書いたのでこうなっている。いつまでそうするかはちょっとやってみないとわからないので、今のところこういうふうになっている。なので前提といっているんですね。デジタルで検定したほうがAIとか使えてうまく検定できるみたいなことがでてくれば、検定はデジタルでやって紙で印刷して配布しなさいみたいな時期がくるかもしれないし、それはちょっとわかんないですね。あと、自治体の整備によってたとえば高校だったら、そもそも保護者がお金負担していますから、うちの学校は理科はデジタルでいきますとか、社会科は紙でいきますみたいなことはありうる。そういうふうなことを考えたときに今は、検定のことを考えて前提といっていますけど、今後はわからない。あと、定価認可みたいな話があるんですが、小学校の教科書はいくらとかね。平均404円とかなんですけど、デジタルって値段つけられるのって話があって、これ404円っていわれてもわかんないですよね。売れたらデジタルは全体的なコストは下がるわけですし、そうなってくるとこの定価認可という制度もある意味あんまり意味がない制度になっていく。今後ね、可能性はあると。だからといって、今廃止にすることはできないと思います。

石戸) まさにその次の論点として、定価認可が馴染むのかということが論点として挙がっているんですが、先ほどの紙の前提かというところと定価認可についてのところについて新井さん、いかがでしょうか?

新井さん) まず、紙の前提というところの意味が先程堀田先生がおっしゃったようなことが理由であればまあそうなのかなと思いますが、先々テクノロジが進展してくると、そうではなくなるかもしれない。たとえば音声とか動画の検定が人の手を介すより機械的に検収した方が的確になるみたいなことはありうるんですよね。あと定価については、等価であれば同じにとってもいいかと思いますが、先々のモデルとして考えると、たとえばデジタルで出して著作権の問題はクリアになるとすれば、印刷自由です、製本もどうぞというところがでてきたら、それを排除するのかどうか。というような問題が先先でてくるかもしれない。でも今は同じでもいいかもしれない。

石戸) ありがとうございます。今の議論を踏まえると、紙の教科書を前提とするよりかは前提としなくてもいいくらいの書き方のほうが、みなさんのご意見に近いように思うのですがいかがでしょうか?

中村) 僕、そうおもいます。紙版がまずないとデジタル教科書ができませんっていう縛りってなんだか変だなとおもいまして、つまり僕がデジタルの教科書を発行する権利があるとしてですよ。じゃ紙ださないでデジタルだけ出したいんですけどって言った時に、それはいいんじゃないですかという制度にしといたほうがいいんじゃないかと思うんです。その時にじゃ僕が出すデジタルの教科書の、じゃどこが検定の対象なのかといった時にCDROMあるいはDVD出して、これを紙版つくるとしたら、ここですよとかここだけ検定してもらったらいいですよとか、そしてそこで定価400円ってつけれられるかもしれないんですけど、教材全体で見ると売る方は1000円で売りたいんですけどね~みたいな議論があってもいいんじゃないかなと思います。じゃ導入時期からそれを認めるかどうかというのは、別ですが、普通にそれくらいの話は出てくるんだと思います。

石戸) 意見としてはみなさん概ね一緒かと思うので、あとは書き方ですね。誤解が生まれないような丁寧な書き方がされるといいなと思います。

堀田先生) これね~ここから先は僕の予想ですけど、多分中村出版が出してきた時にデジタルだけ出しますみたいなことを認めていかないと今後デジタルを活かしたいい教科書というのが出てこないかもしれないと思うんです。それはある意味参入障壁を下げることにつながると思うので今の教科書会社の人たちがこれに対してどうおもうかとか、そこの産業としてのあたりを調整しなきゃいけないので、今こういう書き方なのかなという部分もあるのかなと思います。予想です。

石戸) 今日教科書会社の方いらっしゃるんですけど、当てられなくないかもしれませんが、ご意見がある方はいかがでしょうか?時間内に全部の項目を議論しようと思って、先程から一所懸命順番を考えているんですが、先程検定の議論をしましたが、もう1つ大事なのが無償措置の話かなと思います。デジタル版教科書もいわゆる無償措置の対象とするのか否かというところについて堀田先生いかがでしょうか?

堀田先生) 教科書の使用義務から考えるとデジタルでも紙でもどっちでもいいよという時代がいずれきた時にどっちも無償と。どっちも使いたんですけどというのを許すのかどうかですね。コスト的には2倍かかる。ORにしましょうとなったら、それは学校ごとにするのか、地域ごとにするのか、あるいは子供ごとにするのか、そういう話がでてくるので、またネットワークは大丈夫なのかとかという話とか全部関係してきちゃうので、こういう問いかけになっているんですね。

石戸) この件はいつもいろいろとご意見のある片岡さんいかがでしょうか?

片岡さん) これもDiTTの中でいろいろ議論はあったんですけども、基本は無償にすべきなんじゃないかという話をしていました。ただ、紙なのかデジタルなのかという選択権は今の教科書の選定をされている枠組みの中できめるべき話であって、ただ何かを決めるとそれ以外は選べないというのは避けるべきだと。紙を選んだ場合でもデジタルもできるというようにすべきなんじゃないかというのが実は以前デジタル教科書法案の議論をした時にもでてきた話です。そういう選択ができるようにしましょうと議論していました。

石戸) ありがとうございます。あとそれに伴いまして、もうひとつの論点も非;常に大事でして、デジタル教科書の導入に伴う保護者の負担をどうすべきかということについても堀田先生いかがでしょうか?

堀田先生) 苦しいところが続いていますが、べきだ論とすれば僕も片岡さんと同じですよ。でも予算的にできるかということを考えるとそうはいかないと。400億を800億にしてくれるんだったら、両方どうぞということになるんでしょうけど、そうもいかないという。あと教科書会社が紙ではこれだけしか印刷しないんだけどそれでも紙でつくるとなると、工場をもっていなければならないとか、在庫をどれだけかかえておかなければならないとか、そういう別のロジックが出てきてしまうんです。それでコストが400億超した時に保護者負担みたいなことをデジタルについては当面考えるみたいなことは、現実論としてはありえる。なのでこう書いたんです。べきだ論で言えばそれは全部無償ですよと僕は思います。だけど、そこまでして有償にしたとしてもやっちゃったほうがいいんじゃないのという意見もなくはないんです。以上です。

石戸) 財政面でご意見のある中村さん、どうぞ。

中村) ぼくらの姿勢として、400億円が450億円になりそうだから、難しいから辞めようという姿勢ではなくて、だったら50億増やしてくれよ、あるいは800になったらどっちも使えるということであれば800とりにいこうよと外に向かってメッセージを発信していかなければならないと思いますし、それは文科省と相談することではなくて、みんなで財務省いこうとか、国会議員の先生にお願いしようとかの話になるんじゃないかなと思っています。つまりこの分野の日本の中のコスト、財政負担というのがもっとかけるべきだと、子供たちの教育環境を豊かにすべきだ思っています。その中での現実解として、じゃ来年どうするという話になるんですけど、将来に向けてそういうメッセージを送ることは大事だと思っています。

石戸) まさにここは理想と現実の間でどこを落としどころにするかということで非常に難しい議論だとは思いますが、一番の肝でもあるので、今後も引き続き議論していければいきたいと思います。検定、無償措置の議論をしましたが、もう一つ残る大事な論点が著作権です。しかし、これは議論し始めると時間が足りませんので、次回著作権に特化したシンポジウムを別途用意しました。この件はそちらに回したいなとおもいますが、今どうしてもここで言っておきたいというご意見があれば、是非お聞かせいただきたいんですが、いかがでしょうか?

堀田先生) ほとんどの問題がやはり著作権法で立ち止まるみたいな感じが印象としてあります。なので是非次回いっぱい議論していただいて、DiTTさんから提言を出して頂きたいと思います。
文化庁で調整して何らかの委員会が立ち上がって、どういうふうにやるかみたいなことが何年もかかって、やっと法改正がなされると思うので、今のうちからいろいろ議論しておくべき重要なことかなと思います。もう一つだけ言っておくと、(スライド戻してもらっていいですか?)テストとかドリルとか作っている会社は教科書を一部使わせてもらっているので、教科書会社にお金を払って著作物に対して、いずれにせよ教科書会社はいいよと言って教科書協会がいろいろ調整をしてくれているんです。もし参入障壁を下げると、テストやドリルの会社がそういうあまりお金を負担せずに教科書準拠みたいなものを作れたらいいねという話が一方ではあって、そうするとこれがデジタルになれば、周りには新しい参入がいっぱい入ってこれるということになる。教科書会社から見れば収入減になるかもしれない。そのへんは慎重に議論しなければならないということになります。

石戸) ありがとうございます。

中村) 著作権については、教科書法とか発行法と著作権法といったものが一気に3点セットでパーンと整理すべきだというのがこれまでの我々の立場だったんですが、ここにくると堀田委員会で結論を出していただいて、教科書の制度を直していただいてデジタル版教科書が制度として進むということを先にやってもらって著作権法の整理はもうちょっと後になるっていうことになってもそろそろ仕方ないかなという私の思いであります。知財本部の座長もやっているんでそっちの議論も早くしたいんですが、著作権だけはビジネスに直結しているということと既存の権利を持っている方々の権利をある種ひっくり返すことになりかねないので、少し議論は時間がかかるかもしれないなと思っています。これも理想と現実の線引きをそろそろすべきかなと思っています。

石戸) ありがとうございます。あと残り7分ですが、最後に配信とスケジュールだけ議論させてください。最後の項目が導入に当たって必要となる環境整備の話なんですが、デジタル教科書だけではなくて、端末それからネットワークなどさまざまな環境を整備していきましょうということは異論なきところだと思うんですが、議論したいのはデジタル版教科書の供給、配信方法ですね。4月初日にみんな教科書使えないと困る。それを実現する方法をどう整備していくのかというのは非常に大事なポイントだと思うんですが、堀田先生いかがでしょうか?

堀田先生)現在の紙の教科書は、4月1日とか2日とかその頃には確実にすべての学校に教科書供給協会というところが供給しておりまして、非常に細かいところまで、たとえば急に転居したとか、前の学校と教科書が違うので、もう1冊いるとかそういうレベルの話まで細かく調整して、今の仕組みに見事に対応しているんです。この人たち呼んでヒアリングしたら、デジタルについては私どもはまだなにもやっておりません、決まってないからできません、みたいな感じだったんです。なので、それは困ったなと思ったのが僕の印象です。つまりデジタルになってしまったら、流通の途上に存在したこれまでの仕組みは全部いらなくなっちゃうじゃないのということです。ある意味業界を壊してしまう可能性があって、それは望まれていることなのかどうかということがまだはっきり決められないと思うところはあります。あと、配信は佐賀県のことが話題になりましたけど、あれも佐賀が悪いわけでもなんでもなくて、実際現実にある時期全員が集中的にすべての教科のそれも何ギガのものをダウンロードしようとおもったら、それは普通無理なんですよね。そういうものについてあの時はリスクも背負いながら当事者同志が工夫してやられたわけですけど、そういうことについて現実論をそろそろ動かしておかなければならないし、学校のネットワークとか、端末をどうするのかとか、ほんと真剣に考えていただかないとデジタル教科書も動けないと思います。以上です。

石戸)ありがとうございます。片岡さん、私たちが議論してきたデジタル版教科書の配信機構についてお話いただいてよろしいですか?

片岡さん) はい、配信に関しましては、先程お話ありましたように今の教科書は非;常にうまく出来上がっている仕組みでしかも40年近く経っているとお聞きしておりますので、デジタル版教科書も同じサービスレベルを求めるのかということも含めて検討していく必要があるんじゃないかと思っています。それで4月1日時点でどこまでが配信されていてその質保証をどうするのかというところは中でも議論されていましたし、そういったものを配信するためにたとえばナショナルセンターみたいなものを作るのかとか、各都道府県に置くのかとかということも議論しました。とはいえそもそも今の学校のネットワークとか設備というのはデジタル版教科書を前提とした形では整備されていないというのも確かなんですね。なので我々としてはそれを前提とした整備を今後考えていく必要があるんじゃないかということを、このあとスケジュールの中でもお話させていただこうと思っています。

石戸) ありがとうございます。その一つ上の項目に整備状況によりデジタル版教科書を導入できない地域・学校が存在し得ることについてどう考えるべきかという論点がありまして、これに関しては、そういうのが存在しないようにしてくれと思うのですが、まさにこの議論で大事なのはスケジュールだと思うんですね。どの年から間にあうのか、どの学年から間にあうのか大事なのはスケジュールだと思います。先程堀田座長からゴールデンウィーク明けあたりを目処に中間報告出せるといいなというお話がありましたが、スケジュールについて私たちDiTTの一部が考えたことというのがありますので、片岡さんからそのスケジュールについてお話いただければと思います。

片岡さん) もう時間がないので、簡単にお話します。すみません、ちょっと見えないかもしれませんが、デジタル版教科書は2016年度ゴールデンウィーク明けに中間報告そして、2016年度中に報告がでるということにしています。その周辺部分のデジタル教材の標準化みたいなところを、インタフェースみたいなところをはじめていかなければならないだろうと考えています。で、これを作ったとしても環境が整備されていなければ普及というのはできません。なので、我々としては教育の情報化推進法案みたいなものを作りまして皆さんに提示していこうと考えています。それをもって推進力として動かしていければなと思っています。で環境面と書きましたが、実は今の学校の情報整備というのは第二期教育振興基本計画に基づいて2017年度末までに3.6人に1台という整備が現在進められています。ただこの状態ではデジタル教科書を一人一台というのはなかなか難しいので、このあとに第三期教育振興基本計画みたいなものがおそらく出てくるだろうと思っています。その時に一人一台デジタル教科書を前提としたシステムというものをこの中に入れる必要があるんじゃないかということで書かせていただいた資料です。おしりは2020年度、小学校の新指導要領改訂が施行される時にデジタル版教科書が実現できている姿ということで書かせていただきました。あともう1点だけ、実は今年度文部科学省から情報化の推進教育について統計データが出たんですけど、一つ大きな問題があります。成果は徐々に進んでいるんですけど都道府県によって格差が広がっています。整備が進んでいるところと進んでいないところが出てきているという状況になっています。おそらくこういうのを実現しようとするとそういった格差がないような形に進める必要があるとおもいますので、是非推進法案のなかにもそういったことを盛り込んでいきたいと思っております。以上です。

石戸) ありがとうございます。ぴったり3時、駆け足でしたが、一応全部の論点議論したんじゃないかと思うんですが、登壇者の皆さんなにか抜けていることありましたでしょうか?

堀田先生) 抜けていることはないんですが、一言だけ・・

石戸) 最後に一言づつお願いしようと思っていましたので、堀田先生どうぞ

堀田先生) あっすみません、僕一所懸命頑張っていますので皆さん是非応援よろしくおねがいします。
これは冗談ですが・・文科省の人がすごく頑張っています。たくさんの軋轢の中やっていらっしゃいますので、是非応援しながら見守っていただければと思います。これがひとつ、そしてあと格差の話と整備のところは、僕が担当している検討会議の所掌外なんですね。基本的には一般財源でついて各地方自治体が導入することになっているので、これは日本の決まりなのでなんともどうしようもなくて、今全国平均でいくと6.4人に1台なんですよね。今の6.4倍入らないとみんながデジタル教科書を一人一台使えるようには当然ならないということなんですよね。かなり加速しなければならないという現実があるので、是非みんなで機運を高めていただきたいと思います。以上です。

石戸) ありがとうございます。今日文科省の方もいらっしゃっていますが、是非よろしくお願いします。では新井さん一言よろしくお願いします。

新井さん) まず整備の問題なんですけど、デジタル版教科書と付いた場合整備されていない地区があると制度上導入すべきかどうかという議論になってしまうんですね。等しく環境はないのにという話になってしまいますので、整備しなきゃいけないんだけれども整備は所轄がちがうというのと、それからデジタル版教科書というコンテンツがどこに置かれるのか、教育クラウドというのは日本に何個必要なのとか、どういう設計でどのように配信されるべきかという検討が必要なんだと思います。それと配信の問題はもし無償ということになるんであれば文部日文が部数を管理しなければならないんですが、そのカウントどうするのかとか、そういう制度がいるのかいらないのかという議論も含めてやらなきゃいけない。それとクラウドの整備の問題というのは非常に重要な問題です。まずはそれらを議論しないといけないので、教科書の制度論としてまずスタートできる環境を作りたい。それはいろんな意見があるので、一番大変なのは文科省の事務局と堀田座長なので、応援しながら必要なことは申し上げたいと思います。以上です。

石戸) ありがとうございます。片岡さんどうぞ

片岡さん) 今新井さんからお話ありましたように、おそらく決めないといけないことはいっぱいあるはずなんですが、技術的にも解決しなければならないこともいっぱいありますが、今まではざっくりとしたデジタルなのか、アナログなのかという話でしかやれていなかったところがけっこうあったんだろうとおもうんですよね。そういう意味では実現に向かって細かいところも含めて議論をしていくというところが出てきたのは非常に進んできたなと感じています。ですので実のあるといいますが現実解をみなさんと一緒に見つけさせていただければと思います。以上です。

中村) 教科書の問題どうするかというのは堀田座長にお任せして、支援をしていけばなんとかいい方向に進むというのが共有されたんじゃないかと思います。一方で堀田さんがおっしゃるように6.4倍配んなきゃいけないんだというふうなハードウェアにしろネットワークにしろ標準化にしろコストにしろ、いろんな問題ありましてこれは我々結束して外に向かって働きかけをしていかなければならない。これは文科省だけではなくて総務省あるいはIT本部、財務省そして国会のみなさんと連携をとって、つまり教育の情報化、デジタルの教育というものが日本の将来にとって重要な課題なんだと優先順位、プライオリティを上げていってもらえるようなことをやんなきゃいけないと思っていて、これは外に向けてメッセージを強めていかなければいけないなと思います。以上です。

石戸) ありがとうございました。DiTTとしては、前回アナウンスさせていただきましたように、文科省のペーパーについてDiTTとしての回答案、今日の議論が概ねそうなんですが、そして教育情報化推進法について、文書をだしていく予定ですので、よろしくおねがいいたします。12月1日には著作権について議論できればと思います。また私たちが2020年にむけて議論をしているところではありますけども、総務省や経済産業省等でIoT・AI時代のあり方についての議論がはじまっていまして、その中に人材育成や教育なども含まれてきています。DiTTとしても2020年にむけて着実に推進していく方策を議論しつつも、シンギュラリティと言われる2045年を見据えた今後のプランも作っていきたいなと思っており、年明けには2045年の学びの在り方の意見を集うアイデアソンを予定しております。是非そちらにもご参加いただければと思います。それでは本日は、非常に駆け足ではございましたが、90分の間お付き合いいただきましてありがとうございました。改めましてパネリストの皆さまに大きな拍手をお願い致します。これをもちまして本日のシンポジウムを終了とさせていただきます。

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