2017年09月15日開催
デジタル教科書教材協議会シンポジウム 「円滑な著作物利用の実現に向けて」 ~DiTT著作権WG中間報告発表~
■日時:2017年9月15日(金)10:00~11:30
シンポジウム参加者 :
秋山卓也 (文化庁長官官房著作権課 課長補佐)
工藤紗貴子 (株式会社文理編集企画室/学研教育総合研究所委嘱研究員)
小林圭一郎 (株式会社ベネッセコーポレーション コンプライアンス本部 著作権担当部長)
高井崇志 (衆議院議員)
毛利靖 (つくば市教育局 総合教育研究所所長)
山田卓 (ユアサハラ法律特許事務所 弁護士)
菊池尚人 (一般社団法人融合研究所 代表理事)
中村伊知哉 (DiTT専務理事、慶應義塾大学メディアデザイン研究科教授)
石戸奈々子 (DiTT事務局長、NPO法人CANVAS理事長)
*敬称略
「円滑な著作物利用の実現に向けて DiTT著作権WG中間報告発表」と題し、デジタル教科書・教材の著作権問題に精通した総勢9名の関係者の方々にお集まりいただいた、著作物利用の現状、課題、今後の展望について意見交換を行った。
デジタル教科書の制度化や著作権論議が本格化している一方、著作権処理に関する難問は山積している。このような状況下2016年12月に設立したDiTT著作権WGの中間報告を、菊池尚人DiTT理事より説明いただいた。DiTT著作権WGは、政府や国会議員連盟の法案を後押しすることに加え、制度後の環境整備にむけて、3原則(①デジタル教科書教材の適正な流通、②権利者への正当な対価の支払い、③システム化等による簡便な処理)を掲げ、具体的なアクションを、組織化、システム化、啓発、とした。 菊池氏は「ざっくり言えば、教育版JASRACを作ろう、というものだ。… 放送番組の権利処理を一元化する放送版JASRACのaRma(映像コンテンツ権利処理機構)が形になるのに10年かかった。今回は10年も待てない。」と語った。
次に、文化庁の秋山卓也氏に、文化庁の取り組みや今後の方針について説明いただいた。教育関係団体からの意見書を文化審議会に提出する等、すみやかな著作権法の改正法案の提出に向けて日々取り組んでいる文化庁。学校でのICT活用において、利用の萎縮、多大な手続き費用、許諾を得ずに利用する、といった3つの課題点を挙げ、こうした状況を解決していくために、権利制限規定の見直し、ライセンス環境やガイドラインの整備、研究・普及啓発の強化を掲げている。
シンポジウム後半のパネルディスカッションでは、産官学等様々な立場から、著作物利用を巡る課題、現状、展望について活発な意見交換が行われた。教材のデジタル化を巡る著作権問題において、著作権処理の費用・時間的のコストの問題などが挙げられた。著作権料の価格設定に関しては、「著作物の価値を認め、敬意を払うことが大事。安すぎて権利者と対立するのはよくない。」という意見が多く聞かれた。また、高井崇志衆議院議員は「著作権法改正案をこの臨時国会で通したい。同様に、超党派議連による議員立法も早期に通したい。法案は概ねできているので、提出と審議を早めることが大事。」と語った。
権利処理を一元化し、教材の製作や利用が特段の手間をかけずにすむ仕組みを整備するために、「教育版JASRAC」のシステム構築を目指す著作権WG。中村伊知哉DiTT 専務理事は「著作権の問題は非常にわかりにくい。わかりにくい著作権制度を分かりやすく運用・利用できるようにすること。教育版JASRACの意義は、ここにあります」と最後にシンポジウムを締めくくった。