2011年07月21日開催
第12回 DiTT勉強会のご報告-苅宿俊文氏・村松祐子氏-
2011年7月21日、山王健保会館2階会議室にて、第12回デジタル教科書教材協議会勉強会を開催いたしました。第12回目は苅宿 俊文氏(青山学院大学社会情報学部教授)と村松 祐子氏(富士通株式会社 パブリックリレーションズ本部 政策推進室 マネージャー)にご登壇頂きました。
100名を超える幹事・会員企業の方にお越し頂き、苅宿 俊文様には「教育の情報化と協調学習」、村松 祐子様には「フューチャースクール実証1年目を経て思うこと」というテーマでお話を頂きました。
以下は、発言要旨となります。
-苅宿 俊文氏 ご講演要旨-
効率性を重視する教育の情報化と関係性を重視する協働学習は相容れないのであろうか?第一線の教師が見たデジタル教科書とは動画を中心に教えるための材料があり、便利であるが、便利がゆえに安易な授業づくりとなり、教師の力量形成に課題を残す。また、これが進化すれば、先生は不要になるのではないかという不安の声がある。そこで子どもがデジタル教科書を使ってどのような課題意識を持つか、いかに学ぶか、教員が授業づくりを行う上で一番の課題となるだろう。
そもそも協働的な学習とは、「対話的実践としての学習」を進めていく授業様式であり、つまり知識を効率的に学んでいくことだけでなく、他者との相互作用を通して意味を構成していく行為も学習ととらえられる。子どもたちの学習において、できる(反応)+わかる(知識の獲得)+分かち合う(意味を構成する)ために、教師の仕事はバランスを取り、適正化を図ることである。そのために、授業づくりの「マッチングとフィット感」というバランス感覚が必要となるだろう。それは、授業の三要素である子どもたち(=自分探しのストーリーテラー)、教師(=授業のデザイナー)、PC・道具(=学びをひろげる増幅器)を目的や対象を見据えて構成することである。よって、教師のこれからの仕事は、子どもたちの「場」をつなぐための演出にある。ここに協働学習とPCの親和性があると考え、学習場面によってどのようにデジタル教科書等をマッチングするか考えていく必要がある。
-村松 祐子氏 ご講演要旨-
昨年度、総務省フューチャースクール推進事業において、西日本地区の小学校5校にて実証1年目を行った。実践からわかったことは、とりわけ以下の三点である。第一点目は、デジタルの特性は、子どもたちが自らその学びを深めるきっかけになるということである。例えば、何度も書いたり消したりできることは、書き間違いを恐れずに書けるので、思考を深めることに繋がる。また、効率的に児童の書いた画面を大きく表示できることなどから、発表の機会も多くなり、学ぶ意欲・考えを表現する力を向上させた。第二点目はベテラン教員が活躍したことである。モノと環境(ICT支援員がいる安心感や学校全体で取り組む体制など)があると、授業の中にICTをいかに取り組んでいくか、その指導力や授業デザイン力が生きてくる。第三点目はICT支援員が常駐する意義である。ICT支援員が常駐することでトラブルがあってもすぐに対応してくれるという安心感を教員や子どもたちに与え、ICTの活用を促した。
また、教材作成支援や教員と一緒に授業の進め方を考えるなどの支援も行うようになっているが、その参考となる情報をICT支援員にもっと提供できるような仕組みや、その情報をどう活用していくかなどが、今後の課題として挙げられるだろう。今後の実践では、情報の見える化と適切な提供による気づきの促しが必要である。つまり、「システムでできること(情報処理)はシステムが」、それら情報を活用して「人がすべきこと、人でやらないといけないところに集中化できる」ことを実証していきたい。ICTが支えていくべきことは、知識の習得だけでなく、コミュニケーション力や情報活用能力といった求められる学力の変化へ対応していくことである。また、子ども自身の成長+教員の教育力+保護者の見守り・地域協力+教育政策といった四位一体の改革が必要である。