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勉強会デジタル教科書教材協議会(DiTT)では、有識者による勉強会を毎月開催しています。開催内容を一部ご紹介します。

2011年09月15日開催 

第14回 DiTT勉強会のご報告-桑山裕明氏・田中敏隆氏-

    2011年9月15日、山王健保会館2階会議室にて、第14回デジタル教科書教材協議会勉強会を開催いたしました。第14回目は桑山 裕明氏(NHK制作局第1制作センター青少年・教育番組部 チーフ・プロデューサー)と田中 敏隆氏(株式会社小学館 デジタル事業局 ビジネス開発室室長))にご登壇頂きました。
    桑山 裕明氏には「授業作りを支援する映像&コンテンツ」というテーマで、田中 敏隆氏には「電子化15年・・・・出版からみたデジタルへの道」というテーマでお話を頂きました。
    以下は、発言要旨となります。


    -桑山 裕明氏 ご講演要旨-


    NHKデジタル教材や学校放送番組を作るために多くの授業を見てきました。そこで見せていただいた授業作りのノウハウは、番組作りにも当てはまるものが沢山あります。例えば「狙いを明確にする手法」「相手の経験値にあわせる手法」「情報を厳選する手法」などです。また、「児童や生徒など、受け手に変容を起こす」ことを目的に積み重ねられてきた授業のアイデアは、そのまま番組活用できるものが沢山あります。私も番組の企画作りでは、かなり参考にさせてもらいました。
    さて、現在NHKでは、理科や社会など授業を支援する3000を超える短い動画・クリップや静止画、授業案などを様々な授業支援のコンテンツをWebで提供しています。どれも一斉授業や個人学習をサポートできるよう活用場面をイメージしながら制作しています。そして、これからは…①学校現場の要請に応じ、「番組の10分化」②社会の要請でもある「PISA型学力支援」や「幼小連携」対策③大型画面用教材としての対応などに取り組んでいく予定です。
    最近、先生方によくお伝えしているのは、「動画にはイメージを残して去るという特性がある」ことを理解して、活用して欲しいということ。つまり、「わかったつもりになる」ことや情報量が多さから、子どもたちの意見の拡散しすぎてしまうという欠点があります。だからこそ、授業のねらいである「身につけさせたい力」を明確にして、体験的な学習と組み合わせたり、情報を収斂させる手だてを用意したりする必要があります。番組を効果的な教材とするためには、①学習の段取りと順番を伝えること。②なぜできないの?ではなく、何があれば出来るのかを子どもたち聴くこと。③作業にとりかかる具体的な「手だて」を伝えることが欠かせません。
    授業をどうのように設計するかを学校現場とともに作ることが大切だと考えています。そこで、「わかる授業のためのICT活用講座「や「教員養成大学とのタイアップ」などを行っています。
    最後に、2人の授業の達人の話を… 大村はま先生は、「学習のてびき」という学習の手順を記したプリントを配り、学び方を伝えました。これは、子どもたちが「できるようなるためにはどうすればいいのか」を示したものです。この手法は、今の教育に非常に重要なものだと思います。また、大村先生の「型にはめて無くなるような個性は個性ではない」というのも大切な言葉だと思います。もうひとりは、有田和正先生です。有田先生からお聞きした授業のポイントは5つ。①「提示する情報は絞り込む」②「子供たちの思考に沿った物語」③「発見する喜び・達成感」④「知識・表現は反復・個別指導」⑤「学校だからできること(学び合いがあるからこそうまくいくこと)」。この5つは、教育コンテンツを作る上で必須の条件なのではないでしょうか。 NHKコンテンツは、「学びの中で、子どもの変容に寄与する情報の提供」を目指したいと考えています。


    -田中 敏隆氏 ご講演要旨-


    小学館は「楽しくてためになる」本作りをめざし、1922年に学年誌で創業した。「学習」という言葉は、小学館のコア・コンピタンスとも言えます。私は長年デジタルに携わっていますが、デジタルな取り組みには、プリプレスのデジタル化(川上)とコンテンツのデジタル化(川下)があった。プリプレスのデジタル化とは、DTP化であり、旧来の組版・製版の概念が大きく変わっていきます。もちろん一足飛びではなく、長い年月と周辺環境の進化が必要でした。DTP化は、スピードアップ、コストダウン、人材確保、クオリティアップなどにより、徐々に浸透していった。またアプリの進化により、横書き文化だけでなく縦書き文化にも対応できるようになり、情報誌、週刊誌、コミック雑誌まで、全てがDTPで組まれるようになった。ハード面も、速くかつ安くなり、ネット対応もするようになった。今までは紙の本は再販制度などである意味普遍的な事業として存在し、周辺環境にあまり左右されなかった。しかし、出版社としての消費者向けにビジネスを立ち上げる場合は、アーリーアダプターとしてのリズムでは時期尚早であった。OSや技術の進歩は早いが、サービスの普及を目指しても、通信などの周辺環境とデバイスとそこで扱うソフトが整わないと意味がないことがわかった。
    電子書籍市場に関するターニングポイントはいくつかある。1995年、携帯電話の年間新規契約数が1000万台を超えた。(携帯元年と呼ばれる。)その翌年を境に出版の売り上げは減少に転じる。2005年に携帯各社がパケット定額制を始め、PCのマーケットを携帯のコンテンツビジネスが取り始めた。現在、小学館でもDSドリルシステムなどのデジタルコンテンツを出しているが、小学館の強みは多くのセクションでコンテンツを共有している点である。去年(2010年)は電子書籍元年と言われたが、現状はまだユーザーの目線に立てていない。企業側のサービス合戦に終止している。サービスを本格化するためには、次の三位一体が整わなくてはならない。デバイス(性能・機能)、ソフト(プラットホーム)、環境(通信・ハード)が揃わないと進まない。誰が何のために必要なのかを論議しなくてはならない。こういった点が今後の課題である。教育に関しても一番大切なことは、日本の将来を背負う子どもの教育をじっくり考えることである。 

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