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勉強会デジタル教科書教材協議会(DiTT)では、有識者による勉強会を毎月開催しています。開催内容を一部ご紹介します。

2011年10月27日開催 

第15回 DiTT勉強会のご報告-角田佳隆氏・山口亮氏-

    2011年10月27日、山王健保会館2階会議室にて、第15回デジタル教科書教材協議会勉強会を開催いたしました。第15回目は角田 佳隆氏(和歌山市教育委員会学校教育部教育研究所(和歌山市立教育研究所)専門教育監補)と山口 亮氏(日本文教出版株式会社ICT事業部 課長)にご登壇頂きました。角田 佳隆氏には「ICTを活用した学力向上と校務の効率化について-教育現場でのクラウドシステムの活用-」というテーマで、山口 亮氏には「教科書のこと、お話しましょう」というテーマでお話を頂きました。
    以下は、発言要旨となります。


    -角田 佳隆氏 ご講演要旨-


    和歌山市では、平成21年度総務省委託事業であるICT経済・地域活性化基盤確立事業「和歌山市子供元気アップ大作戦」と称して、ICTを活用した様々な取り組みがなされた。その結果、昨年度教師のICT活用調査でそれまで最下位だった和歌山市の順位が中間程度まで上がった。
    また、以前関西読売テレビで放送された番組でも和歌山市の小学校が取り上げられ、社会科の授業でIPADを使って、ネット検索で知りたい情報を検索して調べ学習をする子供たちの様子などが取り上げられた。注意すべきは、調べた内容は、必ず手書きでノートに書き写していることだ。パソコンとノートが併用して使われている。パソコンを使うメリットは、まず個々に作成した課題をクラス全員で共有できること、そこでそれぞれの改良点を発表して、議論を深めることができるということである。勉強だけでなく、生活管理にも活用している。
    さらに、和歌山市ではICTを活用した学力向上のための研究プロジェクトを進めている。まずは基礎・基本を確実に習得させ、さらに子供一人ひとりの習熟度に合わせたていないな指導をすることで、確かな学力を身につけさせることを目標にしている。また、教務システムのクラウド化により、以下のようなメリットがあった。
    ・校務の効率化
    ・Webでの管理であるため、個々のパソコンでデータを持つこともなくセキュリティ面も改善。
    ・使う場所を限定されない。学校以外でも活用可能。
    ・コスト削減(校内LANなどの整備費が必要ない)
    これはそのまま子供たちの使用するパソコンにも適用され、WiMAX使用により学校でも自宅でも教材を活用できることでさらに学習への意欲をもたせることにつながった。またネットをつなぎ、ラインズEライブラリーという管理システムの活用により、子供たちに個別に指導することが可能になり、習熟度に合わせた丁寧な指導を実現することができた。
    また、紙では表現できないもの、英語ならば音声やビデオを使用した教材なども提供でき、子供たちが関心を持ってくれるような学習環境を提供することができるようになったことも大きなメリットである。
    21世紀に向け、さらに先を見据える教育、子供たちにとって将来生きていくために何が必要かを見極めるためにも、ICTを活用した教育システムは大事なカギを握っているのではないかと思う。


    -山口 亮氏 ご講演要旨-


    本日は、「教科書について」「著作権の取扱い」「デジタル化」についてお話します。
    教科用図書(教科書)とは、文部科学省検定教科書と教師用指導書を指す。教師用指導書には書籍のほか、従来はカセットテープやビデオテープやCDなど様々なメディア教材がセットでついていた。教科書の定価については、物価や紙、印刷の価格を相場などから金額を設定している。
    教科書は4年ごとに制作されており、小学校は今年(平成23年度)の4月、中学は来年(平成24年度)4月、高校は再来年(平成25年度)4月に新しい教科書が発行される。
    最初の検定出願までの2年間は、出版社としてはクリエイティブな編集期間となり、その後の2年間は文科省で中身を検定し、教科書調査官とやり取りしながら、検定合格に向けて調整。採択後も微調整を行いながら、4月に子供たちの手元に渡るという流れとなる。内容が認められれば、最後の1年間は教師用指導書の作成に入る。
    日本文教出版は図画工作・美術の教科書の出版からスタートした。特に美術の教科書には表紙も含め、多くの作家の作品を掲載しているが、この作品は補償金という制度(著作権法で定められている)に則って、使用料を支払っている。また、海外の美術作品に関しては主に美術著作権協会(SPDA)が一括管理している。
    もうひとつ、著作権に影響する教科書は社会である。歴史的建造物などの写真の使用に関してはクレジットを入れることになっているが、そのほとんどが有償となっている。デジタル教科書(教師用)を作成した際に、一部写真掲載NGの建造物があった。画像の流出を恐れているのかもしれないが、今後デジタル化に許諾しないなどの可能性もあるのではないかと懸念している。このことからも著作権は、デジタル教材の開発にとっていろいろな弊害ももたらすのでないかと考えている。今後は、さらにデジタルとアナログの融合化が進むことが予想されるが、2015年度(平成27年度)に新しくなる小学校の教科書や、教材開発へ向けて、得意分野同士がコラボしながら開発していけばと思っています。 

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