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勉強会デジタル教科書教材協議会(DiTT)では、有識者による勉強会を毎月開催しています。開催内容を一部ご紹介します。

2012年09月20日開催 

第26回 DiTT勉強会のご報告-竹元賢治氏・近藤武夫氏-

2012年9月20日、山王健保会館2階会議室にて、第26回デジタル教科書教材協議会勉強会を開催いたしました。今回は竹元 賢治氏(インテル株式会社 イノベーション事業本部教育事業統括部 教育事業開発部長)と近藤 武夫氏(東京大学先端科学技術研究センター 人間支援工学分野・講師)にご登壇頂きました。竹元 賢治氏には、「21世紀型教育をビジネスとして語ろう」というテーマで、近藤 武夫氏には「障害のある児童の学習の現状と、有効なコンテンツ・機器」というテーマでお話を頂きました。
以下は、発言要旨となります。


-竹元賢治氏 ご講演要旨-


1985年に、日本で初めてのICT教育が始まった。2012年の現在、インターネットの出現とテクノロジーの進化により、27年前に考えていた未来を手に入れつつある。しかし、当時よりも経済状況は悪化し、更にアナログ時代にあった日本の優位性は、デジタル時代になって失われつつある。グローバル化も進み労働賃金が標準化していくなか、日本は新しい産業の発展や職数を増やして行く必要がある。
いま、日本の企業はグローバルでの競争を勝ち抜くためにイノベーションを興せる即戦力のある人材を求めている。 即戦力を構成するために必要な基礎能力として、創造性、問題解決能力、コミュニケーション力、協働力、リーダシップ力、ICT活用力。 例えば、 コミュニケーション能力ひとつとっても、企業のグローバル・コミュニケーションでは、英語スキルだけでなく、伝えあうためのスキルや、ICTを活用し、より効果・効率的に実現できる手段を持つことが重要である。
これら能力を、これからの社会を担う子ども達に育成するためには、学力観のパラダイムシフトが必要。授業を「教える」ことから、「生徒自らが学習を構成していく」21世紀型授業への転換が必要と考える。また、これらを効果的実現するために教育現場でのICT利活用の推進しなければならない。 つまり、21世紀型教育とは、デジタル社会(時代)を生き抜く力を育む教育である。
また、同時に、子ども達にはICTの活用がなぜ社会で必要なのかを企業(社会)側が教えていく必要がある。なぜなら、ITの最前線側として最新事例や情報を所有しているのは企業である。将来の優秀な人材を得るためにも我々は21世紀型スキル育成において教育に貢献する必要がある。
インテルでは、21世紀型スキルを育成するための”思考支援型”授業を構築するための教員研修プログラムをワールドワイドで提供し、支援をおこなっている。


-近藤武夫氏 ご講演要旨-


平成14年の文科省の「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する全国実態調査」では、通常学級での発達障害のある児童は、全国の小中学校に6.3%いるとされている。人数を推計すれば66万人となる。また,6.3%のうち最も大きな比率を占める障害は学習障害であり,4.5%を占める。
学習障害のある児童生徒には,目は見えていても,文字を見て読むことに大きな困難のある児童が含まれる。彼らは、学習を行う以前に,紙に印刷された教科書が主な教材として使われている教室には参加することが難しい。そのため,「印刷物障害(=紙の印刷物を読むことに困難のある障害)」に含められている。また,学習障害は外見上からは障害あることがわかりづらいため,「見えない障害」とも言われる。結果,障害のために勉学が遅れていることを本人の甘えであると見られてしまったり,適切な支援を受けられないままに過ごしている子どもたちも多い。こうした児童生徒には,学校からドロップアウトせざるを得ない現状がある。
障害のある子供たちの学びを支える技法としてテクノロジーの利用をして、支援していく必要がある。デジタルはアナログな教材等とは違い,コンテンツの提示方法を調整したり,変換することも行いやすい。そのため、障害を持つ個々の児童に合わせて利用できるところもひとつのメリットとなっている。障害のある子どもとない子どもがともに学ぶインクルーシブ教育とそこで合理的配慮が提供されるこれからの時代に不可欠なものとなる。代表的な支援技術デバイスの持つ機能例として、「音声で読み上げる」、「文字や色などを読みやすく調整する」、「視覚的な注意をガイドする」、「文章を視覚的に構造化する」、「音声で文字を入力する」などがある。
実例として、東京大学が運営しているDO-IT JAPANで、障害を持つ小学生に対して、テクノロジーによる配慮がない場合とある場合でテストを行い,成績を比較した。結果は、配慮なしの場合よりも配慮がある場合で、点数が2倍以上,偏差値でも20以上の向上が見られた。この事から、発達障害のある子供に対して技術を使って支援していくことは、学びに困難を感じている多くの子どもたちの学力を底上げすることにもつながる。日本の国力のボトムアップにも繋がっていくだろう。
しかし現状は、教育の現場では障害児へのテクノロジー利用は一般的に認められにくく,支援につながっていない。海外(特にアメリカ)での読み書き障害児へ向けた教育現場でのテクノロジー利用の現状と、日本の現状には大きな格差がある。また、高校入試や大学入試でもそうした配慮が得られるように小学校から大学まで一貫した支援が必要である。

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