2012年10月18日開催
第27回 DiTT勉強会のご報告-田村賢哉氏・後藤正樹氏-
2012年10月18日、山王健保会館2階会議室にて、第27回デジタル教科書教材協議会勉強会を開催いたしました。今回は田村 賢哉氏(eDesign 共同代表/奈良大学大学院文学研究科地理学)と後藤 正樹氏(株式会社ベストティーチャー 取締役CTO)にご登壇頂きました。田村 賢哉氏には、「学生・若手研究者集団が構築したデジタル地球儀を用いたデジタル教育推進の形」というテーマで、後藤 正樹氏には「みんなで学びあえる環境を、いますぐ簡単に使えるために~予備校講師兼webエンジニアによる実践と提案~」というテーマでお話を頂きました。
以下は、発言要旨となります。
-田村賢哉氏 ご講演要旨-
デジタルマップを活用することで、よりリアリティをもって社会の出来事を捉えることができる。 例えば、イラク戦争で死んだ人の数などを地図上で示すとわかることが多い。そこでデジタルマップを教育で活用できないか探ってみた. デジタルマップを教育で活用する3つのポイント.
1)立体的に捉える。2次元の地図を立体的に捉えることができるのが、デジタルマップの特徴。3Dの地図から見える情報により、生徒へよりリアルに伝えられる。
2)社会に興味を持つための写真や映像などのアンコンテンツをデジタルマップの上で表現ができる。
3)文字の暗記から地図を使った体系的な理解へ。 体系的な地理歴史科理解のできるデジタルマップ教材を作成することで多くの学校で導入することができた.このような主題図を集めたデジタルマップ教材をOpenTextMapでデータベース化することにより,いつでも学校の先生が活用できるようになっている.
しかし,デジタル教育を普及させるには多くのハードルがある。
1)特別な知識・技能が必要。
2)ハードウェア・コンテンツ環境が整わない。
3)そもそも教材をつくる時間がない。
4)教育での活用について具体的な指針がない。
企業,学校,研究機関の連携を目指したコーディネータとしての役割がデジタル教育のハードルを解決していく。eDesignは第四の立場で、学校の先生や企業等と連携して、コーディネータとしての役割を担っている。さらに現代の地理歴史教育にデジタル教育を普及させるだけでなく,次世代教育の地理歴史教育を見据えてデジタル教育の研究開発をしていかなければならない。しかし、先生にはそのための教材を作る時間がない。学生・若手研究者がデジタル教材を作ることで、次世代の教育がおこなえる学校環境を作っていく。デジタル教育が次世代教育を支えると考える。
-後藤正樹氏 ご講演要旨-
代々木ゼミナール講師での経験より、一斉教育への限界を感じる。 一斉授業でも、家庭教師のような1対1でつながるような授業が出来ればという思いが生まれ、 2010年に文科省がデジタル教科書の導入を検討していることを知り、本システムを考案した。
独立行政法人IPAの「未踏IT人材発掘・育成事業」の援助を受け、Real-time LMSを開発。 具体的には、iPadなどのタブレット型端末を一人一台持っている環境で、 授業中に利用することを意識した新しいLMS (Learning Management System)である。
・生徒の学習状況を先生がリアルタイムで把握
・お互いの解答やノートを共有することで、様々な考え方を学ぶ
・学習のログを取ることで、今後の授業に活かす
など、「みんなで学び合う」新しい学習スタイルを構築することができる。
これまでの学校教育では、一斉授業で教わった概念を自宅で演習を通して確認するという流れであったが、 これでは、授業でわからなかった生徒は、わからないままになってしまう。 概念を教える授業よりも、演習こそ人それぞれ躓くポイントや課題が異なるので先生が必要であると考えるので、 将来的には、授業動画で学んだ概念を、学校で演習を通して確認するというような学習プロセスに変化するべきだと思い、 それを実行するためのシステムという側面もある。 本システムにより、IPAより「スーパークリエータ」の認定を、そして日本e-learning大賞奨励賞を受賞した。