2012年12月20日開催
第29回 DiTT勉強会のご報告-藤川大祐氏・大生 隆洋氏-
2012年12月20日、山王健保会館2階会議室にて、第29回デジタル教科書教材協議会勉強会を開催いたしました。今回は藤川 大祐氏(千葉大学教育学部 教授)と、大生 隆洋氏(FLENS株式会社 代表取締役)にご登壇頂きました。藤川 大祐氏には、「レゴブロックとICTを活用した数学的思考力向上プログラム」というテーマで、大生 隆洋氏には「タブレット導入1年を経過して ~90校舎でリアルタイム対戦型授業、学習塾発の提案」というテーマでお話を頂きました。
以下は、発言要旨となります。
-藤川 大祐氏 ご講演要旨-
「レゴブロックとICTを活用した数学的思考力向上プログラム」
学生の力で学校と企業社会を結んであらたな学校教育を作っていこうというコンセプトで、大学の研究室を基盤にNPO法人企業教育研究会(略称:ACE)をつくっている。
( http://ace-npo.org/index.html )
そこで昨年度からDiTTの授業の開発を取り組んでいる。今年度はレゴ・エデュケーションと企業の社会貢献のプロジェクトとして大学教員と学生が、企業と一緒に中学の数学授業で実証研究を行った。中学校の数学とは、昔は数学というのは複雑にみえることを単純な原理で美しく証明するエレガントな証明であった。今はコンピューターの機能が発展ができたことで膨大なデータをつかって複雑な証明をしようということがすすめられている。この件につきましては独立行政法人科学技術推進機構(JST)による「社会とつなぐ理数教育プログラムの開発」を受託して開発したプロジェクトとして数学の証明の歴史をあつかって中学生に証明について学んでもらう取り組みをしている。
( http://acenpo.org/achievements/prize/28_digital_kyouzai.html )
情報技術を使った数学という面があるということを理解しないと社会にでて何かをしようということにつながらないのではないか。そこでコンピューターを使った数学の問題の解決が進んできた。今回レゴ・エデュケーションとACEで千葉大学附属教育学部附属中学校の生徒11名と5回にわたり、iPadを使用して実証研究の授業を取り組んだ。授業内容は、レゴのホームページにあるブロックの組み合わせの検証することを題材にした。
( http://www.legoeducation.jp/lec/possibility.html )
その理由として、学校の数学は決まった答えを導く手続きとらえやすいが、現実の数学は答えがなく、社会で実際に取り組まれる問題にも、基本的に答えが決まっていいないということから、未解決の問題をチームで取り組む授業を行った。
本実証研究の追試可能性や再現可能性を高めていくためには、時間数を5回より多く確保することスムーズに検討を行えるように補助教材としてアプリのようなものが今後必要である。プロジェクトの評価と課題については、資料を参照してほしい。(お願い:資料は会員ページ参照)
-大生 隆洋氏 ご講演要旨-
「タブレット導入1年を経過して
~90校舎でリアルタイム対戦型授業、学習塾発の提案」
学習塾「湘南ゼミナール」で小中学生の教育に18年間従事する。その後MBAを取得し、学習指導要綱の改訂に伴う新しい学習のあり方を探るプロジェクトチームを結成しFLENS算数特訓を開発し、湘南ゼミナールからのスピンオフ・ベンチャーとしてFLENS株式会社を設立した。
FLENSでは、タブレット端末を利用した展開をしようと思い、第1段階として計算を中心とした算数と称し、いかにモチベーション高く効率よく行うかと掲げ、「誰でも夢中に反復学習、競うタブレット授業」をコンセプトとして1年間授業に取り組んでいる。反復学習(計算・暗記)を定期的にやって身に着けるのは非常に難しくまたモチベーションが上がりにくい。そこでいかに自宅で自主的にしっかり勉強をしてもらうという動機でタブレットの授業があるという位置づけにし、自宅学習を行ってもらえるような仕掛けをしている。
内容としては、ネットワークで繋がった90校舎、2000名の生徒がタブレットを使いリアルタイム対戦形式で一体感を感じながら競い合い、誰でも夢中になれる反復学習をしている。例えば、校舎別に順位がでることにより次の授業までに個々が自宅で、教室の順位向上に貢献できるように学習してくる等、モチベーションを上げるよう考えている。
学習塾にICTを導入することで現場の先生が抵抗する分野があると感じたことは、先生の代わりにこの教材を使うと先生がいらなくなりますよ的な教材は現場の先生は非常に嫌う方が多々いる。そこで先生が困っている反復学習や知識の定着をサポートするコンテンツを開発したところ、現場の先生にも進んで利用してもらうことができた。
また、ICTの導入にあたって、e-ラーニング特有のいつでもどこでも勉強が出来るという価値については、子どもたちに聞くと決められた時間で決められた勉強だけをしたいという意見で、いつでもどこでもできるのは好きではないという結果がでた。いわゆるいつでもどこでもできるというのは価値がないということで、決められた時間を塾で利用する方がモチベーションがあがるのではないかと考えている。
導入から10か月経過したアンケートの結果にはICTを使うことにより飽きることなく高い効果を継続していることがわかった。今後学習意欲が継続できるように出来るだけシンプルにコンテンツを開発していこうと考えている。
また、模試の結果をみると全学力層のモチベーションがあがっているように見られる。先生アンケートでは、「利用することに満足していますか」という質問に80%が満足していて「子どもたちの計算に対するやる気上がっていますか」という質問にたいして、高い指示を得ている。今後のコンテンツの展開は応用問題まで踏み込まないで知識の定着・暗記・記憶に特化していきたいと考えている。
タブレットに関しては丈夫さは重要であり、ネットワーク構成に関しては回線負荷が小さい構成にしている。バックアップ体制はトラブルが起こることを前提にしている。1年運用して感じたことは、以下である。
1.リアル授業をベースに設計する。
2.学力向上の中でのICTの役割を明確にする。
3.トラブルを前提としたオペレーションを確立する。
4.ストレスのない学習環境を実現する。
5.社会人向けeラーニングとは別物と考える。