2013年6月19日、山王健保会館2階会議室にて、第35回デジタル教科書教材協議会勉強会を開催いたしました。今回は上原　哲郎氏（株式会社AZホールディングス　取締役/株式会社コンセント　取締役）と、支倉　常明氏（株式会社エレファンキューブ　代表取締役）三浦　学氏（株式会社エレファンキューブ　取締役）にご登壇頂きました。上原　哲郎氏には、「未来のデジタル教科書を検討する～UXD（ユーザーエクスペリエンスデザイン） による検討で見えてくる現在の課題と将来に向けた要件～」というテーマで、支倉　常明氏と三浦　学氏には「さわってうごくデジタル教材AQUA～デジタルにしかできないこと～」というテーマでお話を頂きました。
以下は、発言要旨となります。

-上原　哲郎氏　ご講演要旨-

「未来のデジタル教科書を検討する
～UXD（ユーザーエクスペリエンスデザイン）による検討で見えてくる現在の課題と将来に向けた要件～」
教育現場におけるデジタルデバイスの導入の際に、ユーザーエクスペリエンスデザインの視点からの検討を加えることで、新たに見えてくるものがある。
ユーザーエクスペリエンスデザイン（＝UXD）とは、ツールやコンテンツ制作する上での手法であり、サービスへの期待感や効果、満足度を向上させる良質なユーザー体験の設計や、課題の発見と解決を行うものである。これは、日本語でいうおもてなしの考え方に近いものがある。
教育の現場にデジタルデバイスの導入が行われていく中で、UXDの視点からの検討を加えることは、新たな課題発見やその解決に導くことができると考えられる。
UXDでは、すべてのユーザーに対してベストな体験をもたらすのではなく。生徒、教師、学校、保護者など、メインとなるユーザーのユーザー体験を向上させるための設計を行う。最初にサービス自体の設計として、展開するコンテンツのスペックや必然性のあるコンテンツへの導線の検討をする。つぎにプロトタイピングの制作を行い、ここのボタンが目立つのに押されない、反応が悪い、などといった現場からのフィードバックを参考に、設計時には見えてこなかった課題の解決を検討する。さらに、想定されるユーザーを特性ごとに分けることで、ある程度網羅的でシェアの大きいユーザーモデルの設定をおこない、利用頻度の高いものや、重要なもの、インパクトのあるものなど、サービス全体の機能の検討を行う。
このようなUXDの視点からの検討を加えることは、教育現場へのデジタルデバイス導入において有効な視点を与えてくれるものであり、課題として上げられるユーザービリティ向上へと繋がるものであると考えられる。

支倉　常明氏/三浦　学氏　ご講演要旨-

「さわってうごくデジタル教材AQUA～デジタルにしかできないこと～」
エレファンキューブが販売しているデジタル教材「AQUAアクア」はタブレットPCでの使用を想定した中学校の数学向けデジタル教材である。「さわってうごくまったく新しい教材」をコンセプトに「公式へのあてはめ」や「単純な答え探し」ではない、講師や生徒自身が画面を操作しながら考え進める教材で、数学の学力向上に不可欠な「基礎的内容」を深く、直観的に理解できるよう構成した。
一般的なデジタル教材には、htmlベースの読み物としての教材や、アニメーションやナレーションが入ったもの、クイズやプラスαの要素が入ったもの等さまざまなものがあるが、デジタルの一番の優位性は、インタラクティブ性だと考える。
インタラクティブ性を有することで、教材はユーザーごとに異なる反応を示すことができるようになり、一人一端末を持つ意味が出てくる。
デジタル教材「AQUAアクア」は、インタラクティブ性を特徴の一つにもつ教材であり、ユーザー自身が図等を触って動かすことできる。開発するに当たって重要視したのは、真の理解に導くことである。インタラクティブなコンテンツによって学習の楽しさを演出し、勉強に対する苦手意識を取り除くことで、自主的な勉強につながるよう配慮した。さらに、各単元に必要な要素のみを提示し、解説などはあえて排した。自分で動かしながら試行錯誤することで、さまざまな考え方があること、そしてそこから答えを導き出すことを学んで欲しい。
「わからない」が「わかる」に変わるためには、考えるプロセスが必要である。わからないことがわかるようになることで勉強が楽しくなり、さらに学びたいという気持ちが起こるようなサイクルが生まれればと思う。