▲

勉強会デジタル教科書教材協議会(DiTT)では、有識者による勉強会を毎月開催しています。開催内容を一部ご紹介します。

2014年01月21日開催 

第42回 DiTT勉強会のご報告-平林ルミ氏・田村正文氏-

2014年1月21日、山王健保会館2階会議室にて、第42回デジタル教科書教材協議会勉強会を開催いたしました。今回は平林 ルミ氏(日本学術振興会特別研究員PD(東京学芸大学))と、田村 正文氏(株式会社東芝 セミコンダクター&ストレージ社 メモリ事業部)にご登壇頂きました。平林 ルミ氏には、「中学校の英語授業でのデジタルツール活用~海外のツールも含めた実証研究のご紹介~」というテーマで、田村 正文氏には「教育分野におけるSDメモリカードの活用について」というテーマでお話を頂きました。
以下は、発言要旨となります。


-平林 ルミ氏 ご講演要旨-


私は、読み書き障害が専門で、中でも小学生の「書く」ことに焦点を当てて研究している。本日は神奈川で行った、中学校の英語授業でのデジタルツール活用についてお話したいと思う。
通常学級でのLDの割合は、2012年の調査で4.5%の子どもたちが学習に困難があると言われている。チャーチルやトムクルーズなど有名な方の中にもディスレクシアであることが知られているが、学習障害の中の2.4%が読み・書きに障害を持つ児童だと言われている。2.4%は日本の中でどれくらいかというと、平成14年の調査で、小学校児童数を約700万人として、2.4%は約175,000人である。かなりの数字であり、40人学級の中で1~2人はいる割合になってる。ひらがなとカタカナと漢字で分けて、読み書きの習得さを調べたところ、ひらがなは0.2%、カタカナは1.4%、漢字は6.9%平均よりも習得できていなかった。読み書きの苦手さというのは、実は言語の仕組みに関係している。漢字は音読み、訓読みがあって前後の文字によって読み方が変わったり、同じ漢字なのに状況によって読み方が違ったりする。文字と形のマッチングがなかなかできないということが生じてしまう。ほかの言語でいうと、日本における英語の読み書き障害を調べたデータはないが、海外での出現頻度を見てみると、英語は5.3~11.8%、イタリア語は1.34%、オランダ語は3.6%、アラビア語は1.0%、タイ語は6.3%など言語によって障害の出現頻度が違ってくることがわかる。言語構造がディスレクシアと結びついていると言える。
そこで、英語学習につまづいている生徒、スペルに特異的な困難のある生徒の実態を把握するため、公立中学校に通う中学生のスペリングの習得度と困難さを調査した。対象は公立中学校2校に在籍する全校生徒587名で、英単語意味課題と英単語スペル課題を行った。1年生で習う英語から課題を出していたが、結果としては、意味課題、スペル課題ともに学年が上がるにつれて成績が優位に高くなった。そして、意味課題とスペル課題には高い正の相関が認められた。しかし、両課題が平均よりも優位に成績が低く支援が必要な生徒は全学年で12.1%、スペルのみに困難さのあった生徒は4.2%存在した。
 上記の調査を経て、マイクロソフトのタブレットPCを活用した実証研究を行った、対象は中学1年A組の34名で、全5学級のうちの1学級で、内1名は発達障害の診断があった。第1単元では、9~10月の間に読み上げ機能があるデジタル教科書を用いて、ワードファイルでの新出単語の確認を行った。第2単元では10月にワードファイルでの新出単語の確認、ワードファイルでのワークブックへの書き込みを行った。こちらには読み上げ機能はない。結果は、定期テストの結果で診断した。PC導入前では、5クラス中最下位の平均点だったが、第1単元終了後5クラス中2番目に高い平均点、第2単元終了後再開の平均点となった。デジタル教科書で音声を確認できるというのは、学習にプラスに働いたと言えるだろう。また、1クラスを事前成績で3群に分けて比較したが、成績の低い群がPC導入後において優位になった結果が出た。そして、生徒たちへアンケートもとっており、PCを使った方が授業での勉強がはかどった、英語への興味が増したと答える子もいたが、そうは思わない子も見られた。個人の学ぶスタイルは違うので、その子に応じたスタイルで学ぶのがいいだろう。しかし、これまで成績が低かった子たちにおいて、デジタル教科書は効果的であったことは明らかであることは確かであった。


田村 正文氏 ご講演要旨-


佐賀の高校で2014年4月からデジタル教科書が導入される、そこで通信環境の不安定を改善するためにSDメモリカードが添付されることになった。 ということは、今後2020年までにデジタル教科書が一人一台の環境になってくるが、すぐには、安定した通信環境にはならないのではないか、またコンテンツ側の画質の向上などが重なったときにSDカードを伴わせたハイブリッドな対応が必要になってくる可能性があるのではないかと考えている。そこで今回はSDカードの動向のお話をします。
SDメモリカードは「NANDメモリ」と「NANDコントローラ」の2つの大きな部品でできている。現在「NANDメモリ」は微細化している。使われている場所としては、SDカード、USBメモリ、内蔵タイプでは携帯、カムコーダ、オーディオプレイヤーなどがある。
SDカードのサイズとしては、デジカメやビデオカメラに使用されているSD/SDHC/SDXCと、携帯電話に使用されているmicroSD/microSDHC/microSDXCがあり、容量としては2GB/4GB~32GB/64GB以上の3種類ある。また、スピードクラスが4種類あり1秒間にどれだけの書き込みができるかによって異なる。最近は高速UHS-Ⅰインターフェイスに対応したカードも出てきている。 特徴としては、高度な著作権保護機能があり、多様な用途に対応、様々な機器のフォーマット形式に対応、上書きや消去するのを防ぐロック機能がついている。
現在、通信環境は安定していないので大きなデータなどを送るときはSDカードを使用して配布し、アップデートする時はネットワークを使うなどと使い分けて行く環境になるのではないかと考えている。
流通させる時もカードには保護がかかった状態で流通できるので安全である。また、セキュリティー面では、使用するアプリケーションによってそれぞれのフォーマットがある。
最新技術としてSeeQVaultを使うことによってハイビジョン映像をそのままSDカードに記録することができ、データの移動もできるようになった。また、二重のセキュリティで機器認証、不正複製SDカード対策ができるようになり、従来より非常に高いセキュリティを確保することができるようになった。 

勉強会の一覧へ戻る



ページトップへ戻る

COPYRIGHT 2011. Digital Textbook and Teaching all rights reserved.