2014年05月08日開催
第46回 DiTT勉強会のご報告-中垣眞紀氏・渡邉英徳氏-
2014年5月8日、慶応義塾大学三田キャンパス北館ホールにて、第42回デジタル教科書教材協議会勉強会を開催いたしました。今回は中垣 眞紀氏(ベネッセ教育総合研究所 グローバル教育研究室 主任研究員)と、渡邉 英徳氏(首都大学東京システムデザイン学部 准教授)にご登壇頂きました。中垣 眞紀氏には、「授業でのICT活用についての実態・意識調査の結果を読む」というテーマで、渡邉 英徳氏には「データを紡いで社会につなぐ~デジタルアーカイブのつくり方~」というテーマでお話を頂きました。
以下は、発言要旨となります。
-中垣 眞紀氏 ご講演要旨-
授業でのICTを利用することの目的や効果と、今後の授業でICTの利用の方向性等についてのお話しをする。この調査は、ICT機器の整備状況にとどまらず実際、先生方がどんな機器をどのように使用してどのように感じているか 子どもたちが21世紀を生きるために身につけてほしいと考えているか等を把握することを目的に、2013年10月~11月にかけて行った。
その結果、
・機器の整備状況は普通教室で整いつつある。
・活用の取組状況では小学校が8割、中学校6割の教員が取り組んでいて、
学年が上がるほど取り組む傾向がある。
・活用意向は高く、効果も感じているが、あれば便利な存在であるととらえている。
・約半数の教員が、活用することへの不安を感じている。
・活用の課題としては、数年前とは違い活用することを想定したものが多い。
・活用の効果としては、学習の興味・意欲向上に効果があると認識し、
ICTを高活用する教員の方が効果をより感じている。
・現在の活用は基本的な知識・技能の習得や教材提示での利用が中心だが
今後は協働的な学びの育成にも活用していきたいという意向がある。 以上の結果、先生方の意識は、活用に向けて非常に積極的で、今後は「表現する力」や「協働する力」の育成に意欲を示している。また、「集中する」・「理解が深まる」 ための「教材提示ができる環境」を整えることで子どもたちが「考える・話し合う→生み出す学び」 の実現が可能になるいのではないか。そこで事例例示、授業計画・実践の支援など 教員支援の体制作りが重要だと考えている。
反転授業は、目的を達成するための1つの手段であること、授業においては生徒たちとの関係をしっかり確立し、授業の目的を明確にすることが重要であると説明した。
渡邉 英徳氏 ご講演要旨-
高校生がデジタルアーカイブ事業に関わっている事例について、デモを交えながら講演いただいた。
Google Earthを用いたヒロシマアーカイブを紹介。地元の高校生によるインタビュー記事が被爆者の顔写真とともにマッピングされている。また、現在の街並みと原爆投下時代の写真が交錯されており、地図上で現在と過去を見せることにより、多面的に読み解くことができ、理解を深められる。
次に長崎版を紹介。テレビで取り上げられた映像を交えながら、高校生たちがスマホで現在と過去の映像を見くらべながら、被爆の惨状をよりリアルに体感し、学習している様子が理解できる。長崎県や沖縄県では、平和学習の一環としてこのカリキュラムが提案されている。
これらのコンテンツの作成を始めたときは、教員や大学の学生などが中心となって作業を進めていたが、いまや地元の高校生たちが中心となり、インタビューをして地図上でマッピングする作業まで手がけるようになった。作り手が語り部になって、是非次の世代に伝えてほしい。
現時点ではグーグルアースを使っているが、今後は生徒たちが社会を担う未来における最先端の技術を利用して、記憶を未来につなげてほしいと考えている。
本日の講演内容は以下の書籍にてさらに詳しく書いているので、是非興味のある方は読んでください。
「データを紡いで社会につなぐ」
http://bookclub.kodansha.co.jp/bc2_bc/search_view.jsp?b=2882345
「Google Earthアプリケーション開発ガイド」
http://books.rakuten.co.jp/rb/12619202/